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blue rose  作者: 灑凪
12/35

chapter.11

「……嵐が来る」

「「「へ?」」」


 突然椿が発した言葉に、瑞華、詩苑、煉夏の三人は間抜けな声をあげる。


 時刻は丁度お昼時。四人は昼食の真っ最中だ。


「……こんなに天気いいのに?」

 煉夏がキョトンとして問う。


 頭上に広がる空は、白い雲が所々に浮かんでいる、穏やかな蒼天だった。

 しかし、椿の表情は真剣そのもので、それが嘘ではないと言うことを物語っている。

「……まぁ、椿が言うなら間違いないんでしょ。で? どの方角から来るの?」

「丁度2時の方角からだな」

 詩苑の問いに応じて、椿が応えた。

「じゃあ、とりあえず急いで次の街に向かおうか」

「そうだな」

 詩苑が言って、椿がうなずく。

「よーし、じゃあ煉夏、全速前進!」

「ラジャッ! …んん? どっちの方角??」

 瑞華の言葉を受けた煉夏が、操舵室へ駆けていこうとして、はたと気づいたように言った。

「あ。そういえば…。 …どっち? 椿」

「……面舵だ」

「だって! 煉夏!」

「ラジャ~」

 そして今度こそ、煉夏は操舵室の方へと駆けていった。


  +++++++++


「お~……。ホントに嵐来てるよ~」


 近くの島にある街の、正面の港とは少し離れた場所に錨を下ろしたあとで、船の上から遠目に見えるスコールを見た煉夏が言った。


「……ホント、煉夏のその目って一体どうなってるのか知りたいわ…」

「え~? 普通だよ?」

「「「いや、普通じゃないから」」」


 瑞華の言葉に首をかしげる煉夏。事も無げにいってのける彼女に、他の三人が声を揃えてつっこむ。


 遠目とは言っても、普通の人間の見える距離ではない。

 煉夏以外の三人の目には、水平線の向こうに、なんとなく黒雲が見えるかな~? くらいの距離である。 それを踏まえると、どれ程煉夏の視力が異常なのかがよくわかる。


「…まぁそれは置いといて、だ。それより、昨日の戦闘で“煉夏が”壊した甲板の修理しなきゃ…」

 早々に話にケリをつけて詩苑が言う。しかも、「煉夏」の名前を強調して、だ。

「あ、そう言われてみれば、あたしの宝物庫の前の床に亀裂入ってたね」

 それに思い当たったらしい瑞華が手を打った。

 その横で椿もうなずいている。

「ごめぇん」

「そう思ってるなら手伝ってね」

 煉夏が、しまったと言う表情を浮かべながら謝った。

「ついでに、そろそろ資材も無くなりそうだから、一緒に買ってきたいんだけど…」

「オッケー。じゃあ、私はとりあえずお留守番してる。夕飯の仕込みもしたいし」

「私も、まだ読みかけの本があるから…」

「あたしは~…」

「アンタは来る。」

「いてててててて…。冗談だよーぅ詩苑ッ」

 瑞華と椿が船番をかって出て、それに便乗しようとした煉夏の耳を、詩苑が問答無用で引っ張る。

 それに対して、煉夏は若干涙目になりつつも慌てて弁解した。


「じゃあ、アタシらは買い出しに行ってくるね」

「うん。ついでになんか珍しい食材があるかどうか見てきて~」

「わかった」

「…気を付けて…」

「ありがと」

「詩苑詩苑っ、そろそろ耳、離して~ッッ」

「はいはい」

「ふえ~ん」


 瑞華と椿に見送られながら、詩苑は煉夏の耳を引っ張ったまま引きずって、船のはしごの方へと向かっていった。


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