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blue rose  作者: 灑凪
11/35

chapter.10

「たったのこれだけ? せこいな~」

「な~」


 場所は変わって、ここはジャッカルの船の上。

 大将がやられたと知った男たちは、どうやら戦意を喪失したらしい。

 もっとも、煉夏のあの恐ろしいほどの強さを見れば、当たり前のことなのかもしれないが…。


 そんな折、瑞華はせしめた宝を眺めながら不満をもらす。

 そんな彼女と同意見なのかどうなのか、あれだけ動いていたのにも関わらず、息一つ乱してはいない煉夏は、瑞華の語尾を真似て言った。

 そんな彼女らの前には、相当な量の宝の山があって。

「……こんなにあってせこいって……」

「お前らの金銭感覚はどうなってるんだ……」

 呆れた詩苑と椿が言っても、瑞華はやはり態度を変えなかった。

「だって、これだけじゃあ煉夏の食費に消えちゃう……」

「……煉夏の胃袋は一体どうなってんだよ……」

「……某マンガの某主人公並?」

「椿! それは言うな!! つか、言っちゃいけないだろ!!!」

 詩苑の呟きにボソリと答えた椿に、詩苑は慌てて言う。

「うん。それくらい」

「そしてうなずくな煉夏ぇぇぇぇっっ!!」

 事も無げに答える煉夏に、詩苑は力の限りつっこみをいれた。

「……大変だねぇ。詩苑」

「全てお前のせいだろうが!!」

 同情して言う瑞華に、詩苑は怒鳴る。

「詩苑怖い……」

「誰のせいだ!」

 怒鳴られた瑞華が、詩苑に向かってそう言葉を投げ掛ければ、実際欠片も怯えてなどいない彼女の様子に、詩苑は再び吠えた。

「……もう、疲れた……」

「どんまいっ」

「……おー…」

 親指をグッと立て、ウィンク付きで言う煉夏に、詩苑は本当に疲れたように礼を言う。

 その間椿は、我関せずとでもいうかのように、遠い目をしていた。


「……うちにあるのはそれだけだ。勘弁してくれ」

「ん~…そうだねぇ……」

 脳震盪から復活した船長ジャッカルが、苦笑混じりに言う。瑞華は、それにしばらく悩んだあとうなずいた。

「うん。まぁ自分たちで獲ればいいし、今回はこれで許してあげる」

 ニッと笑う瑞華に、ジャッカルは小さく苦笑を返した。



「さてみんな、引き上げるわよ~。…帰ってあたしのお金の勘定しなきゃ」

「はーい! 瑞華~ごはんまだ~?お腹すいた~」

「はいはい、船に戻ったらね。それよりもまず、このお宝!」

「はーい…」

「……ブルーローズ(この船)、しまいにゃ沈むんじゃねェの?」

「同感」

 己の欲望をだだ漏れにしている瑞華と煉夏に、椿と詩苑は遠い目のまま呟く。



「よーし、今日は飲むぞ~」

 奪った宝を煉夏に自船に移させて、瑞華が言った。

 食費がどうのといってたわりには、その宝を即日の内に遣うのは、瑞華の豪快な性格故か。

「わーいっ! 宴会~! ごは~ん!!」

 瑞華の言葉に、真っ先に反応したのは案の定煉夏で。

「……おい」

「…………」

 突っ込むことにも疲れた詩苑が息と共に言葉を吐き、椿は遠い目をして、「星が綺麗だなぁ」とかなんとか言いながら、現実からものすごい勢いで逃避していた。

 そして彼女たちは、ジャッカルの船から離れていく。

 その背中を、ジャッカルの一味は黙って見送っていた。


 

 ++++++



「…面白いですね」


 そんなブルーローズを、遠くから見つめる影が四つ。


「また出たぁ~、司(つかさ)の悪い癖」


 影の一人の言葉に、別の一人が応じる。


「今に始まったことじゃないだろう、犂人(りひと)」


 彼らは一体何者なのだろうか。


「そうだよな~。いいこと言うなぁ、智彌(ともひさ)。振り回されんのはいつも俺らだぜ」


 わずかに蒼白い光の射すその世界に…


「…聞こえてますよ、龍(りゅう)」

「げっ」


 彼らはただ、佇んでいた……――。


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