↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
98/108

四月・5 Make-up Shadow

 山口の相談を受けて数日後、オレは散髪に出かけた。

 ちょっと色々考え込んでしまったため、気分転換の意味も兼ねて、サッパリしたかったからだ。


「徹君、今日はどんな感じにする? いつもみたいでいいのかい?」

「えーと、そうですねぇ」

「これから暖かくなるし、後ろは刈り上げ気味にしようか? あとは全体を整える感じで」

「あ、いいですね、それでお願いします」


 流石は子供の頃から通っている理容室(とこやさん)だ、最早ツーカーの仲である。

 おじさんの申し出をそのまま受け、オレは感慨に耽ることにした。


 タカカカカカカカ。

 バリカンの音が軽快な音を立て始める。


 そう言えば生前(?)では一度だけ、野球部の御倉君みたいに五分刈りにした事があったな。

 その日はちょうど村の祭りがあったんだが、自分でもちょっと恥ずかしかったんで、夜に出かけたんだっけ。

 そしたら巡回中の関先生が一発でオレだと見抜き、大笑いされたな。

 オマケに、その声に「なんだなんだ?」と集まってきた同級生達にも笑われたっけ。


 チャンチャンチャンチャン。

 鋏のリズミカルな音が心地よい。


 んで、翌日学校に着いた途端、青野と松元にメッチャ笑顔で、


「ジョリジョリするー!」

「手触り気持ちいいー!」


とか言われて、散々撫でまくられたっけ。

 何というか、今思えばあれも「青春の一コマ」だった訳だ。


 倒された椅子で仰向けになり、顔全体を剃って貰っていると、沖田艦長みたいな心持ちになる。


 地球(せいしゅん)か、何もかも懐かしい……。


 ぐぅ……。




「徹君お疲れ様ー。おお、思った通り、いい男になったじゃないの」

「えっ、や、そんなそんな」

「ほんとだって。ちょっと鏡を見てみなよ」

「えっ、これが私?」

「お約束だねぇ」


 おじさんが笑った。うん、生前(?)基準で言う所の「ツーブロック」というヤツにちょっと似てるな。未来を先取りする男、それがこのおじさんである。

 まぁこの頃はテクノカットが流行ってもいたし、どちらかと言えばそんなノリだったのかも知れないが。

 それにしてもサッパリしたな、思っていた以上だ。


 お金を払って店を出、轟天号に跨がったオレは、新鮮な気分で自宅までの道のりを楽しんだ。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 家の前まで来ると、そこにはミキちゃんと近所の子供達が、道路に模様を描いて遊んでいる姿があった。ケンケンパをする丸模様や、電車ごっこのためのレールなんかが描いてある。

 そして子供達のお目付役として、玲華の姿もそこにあった。


「トーちゃんカッコイイー! アタマ切ったんだー!」

「アタマ切ったら普通に死ぬわ! 髪を切ったと言わんかい!」


 弥次喜多みたいな応酬に、ミキちゃん達がケラケラと笑っていた。

 そうしてみんなでひとしきり遊んだ後、オレ達はそれぞれ帰宅した。


 玲華との別れ際。


 ────チクリ、と、オレの中で何かが疼いた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 翌日、テニス部の朝練。


「今日は男女混合でかるーくダブルスやってみない?」

「「さんせーい!」」


 青野の声かけで、全員が何となくバラけた。……のはいいんだが。

 後輩達の謎プッシュのせいで、オレと青野がペアになった。

 まだまだカタチになっていない新一年生達と、なんとなくラリーを続けていると、時間は終わった。


「また組もうね初川!」

「おう、いいぞ」

「「キャー♡」」


 ────チクリ。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 放課後、陸上部。

 新一年生達に、助走や踏切りの位置を指導していると。


 カシャーン!


 松元が失敗、バーと絡んでマットに落ちた。


「おいおい、大丈夫か?」

「うっ、うん、平気だよ!」

「ならいいけど」


 一応、背中側も含めてぐるりと目視したが、確かにケガはしていないようだ。


 そんなオレ達の様子を、100メートルコースにいるコマちゃんが見つめていた。


 ────チクリ。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 自責の念、とでも言えば良いのか。

 先日、山口との()の一件があってからというもの、オレの中で小さな針が刺さったまま抜けずにいる。

 とは言え、こういうのって誰に相談できるはずも無いしなぁ。


 玲華からは去年、かなり真っ直ぐな感情をぶつけられたが、現在は保留中。

 山口には小動物に懐かれた、ぐらいの感覚でいたが、本人が自覚できていない恋心を、この間告げられたばかり。

 青野と松元とは、まぁ恋愛とまではいかないかもだが、それなりに良好な関係ではいられている。

 涼木さんとコマちゃんは、慕ってくれる後輩といった感じだ。

 度会先生……は、除外させて欲しい、ゴメンナサイ。


 中学時代、と言うか高校受験が終わるまで、恋愛沙汰(これら)は遠ざけておこうと思っていたが、何せその間も時間だけはひたすら進むし、それぞれの感情にも何かしらの変化はあるだろう。

 特に、今回の山口みたいな自覚を、各人が一斉にしてしまったとしたら……。


 Nice Boat。


 ────不穏な単語が一瞬よぎった。ええい、未来でトラウマになったアニメのことは捨て置け!


 ツーブロゲスメガネ。


 ────微妙にあってる気がしちゃっただろ、止めろオレの脳内ChatGPT(チャッピー)


 と、とにかくだ。

 彼女たちに不義理なマネだけはするんじゃないぞ、オレ。

 若さゆえの過ちとか、赤いMS乗りみたいな話じゃ済まないんだからな!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。