↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
89/108

三月・3 君の実家は一万ボルト

 やってきました放課後タイム。

 校内放送で職員室に呼び出されたオレは、……何故かそのまま応接室に通された。なんで?


 しかし、その理由はすぐに分かった。


「この度はお嬢様を助けて頂き、誠にありがとうございました」


 目の前には先日大ケガをした小学生女子と。

 その横には黒縁眼鏡の、なんか執事っぽい人がいて、オレに深々と頭を下げてきた。


「アッハイ、ドウイタシマシテ」

「申し遅れました、私はお嬢様のお世話をさせて頂いている、屋代という者です」


 雰囲気に気圧(けお)されて、返事がロボっぽくなってしまった。

 そして渡された名刺には、『(有)香坂電工』なる文字が見えた。

 香坂? どっかで聞いたことがある名称だな……、って、ああ!


 香坂って、地元では有名な大……と言うにはちょっと格が落ちるが、そこそこ規模の大きな企業である。加えて社長は市議会議員だったりするのだ。

 知らない人は全く知らないだろうが、ミキちゃんちの様な公務員ファミリーには、なじみが深い名前のはずだ。


「ご名刺、確かに頂戴いたしました、ありがとうございます」

「ほう?」


 うっかり社会人スキルを発揮したオレに向かい、屋代さんの眼鏡がキラパーンと光った。


「流石は初川家のご長男だ、しっかりしておられる」

「いえいえ、私の様な若輩者には、勿体ないお言葉です」

「そんなそんな」

「いえいえホントに」

「そんなそんな」

「いえいえホントに」


 このまま無限ループに突入するかと思われた矢先。


「屋代、私にもお礼を言わせてちょうだい!」


 小学生女子が口を開いた。


「そうでしたね、失礼致しました。ではどうぞ」

「はい」


 そこで小学生女子改め香坂ちゃんがソファから立ち上がり、恭しく頭を下げた。


「この間は、ケガで不安になっていた所を助けていただき、本当にありがとうございました、私、香坂真子(こうさか まこ)と言います。今後ともよろしくお願いいたします」

「いや、大したことはしてないですよ」

「いいえいいえ」


 彼女はやけに情熱的な瞳でこちらを見上げてきた。


「あの時の私は、自分でもびっくりするぐらいびっくりしてしまって、何をどうして良いのか分からなかったんです」


 ああ、やっぱりね。気絶こそしなかったものの、あれって一種のショック状態に見えたもの。


「ですが私が泣いてしまったその時、周りの人を一喝し好奇の視線から遠ざけてくれて、私本当に心を打たれたんです。世の中にはこんな素敵な殿方がいるなんて、私あの日までぜんぜん知りませんでした」


 いや「殿方」て。随分と時代錯誤な物言いをする子だ────な?


 あれ?


 自分から見て二学年(ふたがくねん)下の。

 やけに時代劇がかった物言いで。

 コウサカ マコちゃんて名前と言えば。


「? どうかされました? 初川先輩」


 ────オレが生前(?)に交際を申し込まれ、数日間だけ付き合ったことのある、例の新一年生じゃねーか!

 もっと言うと、オレが小学生男子をやっている頃に、やたらと懐かれた生徒だ。

 運動会の時に足をくじいたとかで、オレが保健室までおんぶしたのがキッカケだったかな。

 放課後に話をする機会も時々はあったが、今の今まで記憶からスポッと抜けてたわ、すまん。


「コマちゃんか!」

「はい! そうです先輩! 私コマです! 嬉しい、覚えていてくださったんですね!」


 ピンポンパンポーン♪


 そんな俺たち二人を見た屋代さんは。


「では、後は若い二人でごゆっくりどうぞ」


と、お見合いの席を立つ保護者のようなセリフを残して、隣接する校長室に入っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。