二月・8 気まぐれロマンティック
────翌日。
「あ、おはよう初川」
席に着いて鞄を机にかけた途端、青野が近寄ってきた。
「おはよう青野。今朝は部活が無くて助かったな」
「テニスコートぐちゃぐちゃだったもんね」
その代わり、放課後の屋内自主練が地獄と化すんだけどもな。
「で、今日はアタシが担当ね」
「えっ?」
「えっ? 聞いてないの?」
「何を?」
「初川さん、聞いてないってよ?」
「あ、本人に伝えるの忘れてたー」
待て待て、昨日のイヤな予感が猛烈に現実味を帯び始めたぞ……。
「今日からトーちゃんには『ガーディアン』が付くことに決まりました」
英国の大手新聞社の名前が一瞬アタマをよぎったが、よぎっただけだった。
そして玲華さんや、お前はいつから広報担当官に転属したんだ。質疑応答一切ナシで、決定事項だけ読み上げるなよ。
「インパクトあったじゃろー?」
「どういう事なのか詳しく」
昨日、玲華と山口そして涼木さんの三人で話し合い、その場で浮かんだ『解決策』が会員全員の了承を得、今日の朝イチで度会先生に提出され無事承諾、今朝から施行された────と、いうことらしい。
要するに『ファンクラブ幹部による魔除け』である。
休み時間に教室外へ出る時は付き添いが必ず一人。
不定期開催な放課後の勉強会の時には、オレの両隣に最優先で座ったりするのだそうだ。鉄壁すぎる。
「月曜から金曜日の平日は、二年生の誰か手空きの人が担当するのね」
「土曜日はフリーで良いってことか?」
「それはミホちゃんが可哀想でしょー」
「アー、ウン、ソウデスネ」
土曜日に半日授業があった時代である。そうか、土曜日は涼木さんね。
まぁなんだ、彼女らが懸命に考えてくれて出した結論なのだから、最初から難癖付けるより、先ずは試してみようじゃないか。
こうして新法施行第一日目が始まった。
公布は今朝だったけどな!
お花を摘みに行く時には青野が廊下へ出てくれ、お互い用が済んだらお手洗いの前で待ち合わせ、それから一緒に教室へ戻るという次第。
うーん、神田川。この分なら、明日からも不安なく過ごせるだろう。
決して少なくない手間をかけさせてしまうのだけは、ちょっとばかり心苦しいが。
どうやら他の会員からの苦情も無く、こんな具合で初日は無事終えることが出来た。
WDには個々人に何かお返しを用意せねばなるまいて。




