二月・7 (I Can't) Stop Loving You
オレ達二人の様子を見た神野先生が、「はぁーっ」と、溜息を漏らした。
いやもう何というかホントすみません……。
「これ、一応お説教しなくちゃなんだけど、いいかしら?」
「「はい……」」
俺たち二人は一瞬だけ視線を合わせ、それからちゃんと真面目モードになった。
「これ、いつの写真か覚えてる?」
「去年の11月ですね」
「即答するわね」
「あっ、違うんです神野先生!」
玲華が割って入った。
「この日ってアチ……じゃない、あたしがギターを買いに行った日で、それで良く覚えてるんです」
「そうなの?」
「と言うか、トーちゃ……トオル君と二人であの駅にいた事って、この日しか無いですし」
「そうなんです先生。こんな風に二人きりで駅で会う機会って、自分が今まで過ごしてきた人生の中で、この日以外1フレームもありません」
「フレーム?」
「すみません言葉のアヤです」
「?」
エライぞ玲華とオレ。
所々で素が出そうだったが、何とか耐えきったな。色々と手遅れだけど。
「ギターを買うのに付き合ってくれるってトオル君が言ってくれたんで、あたしこの日は舞い上がっちゃって」
「まぁねぇ、先生も玲華さんの転校初日に、『適度なお付き合いであれば黙認』って言っちゃったしねぇ」
「いやその」
あの時は全力で否定したハズだったんだが、……したよな?
「とにかく、これは玲華さんがこの学校に転校する前の話でした、ってことで良いのよね?」
「それはもう」
「はい」
「分かりました」
神野先生が締めた。
「転校前の親戚同士、ましてや至極プライベートな二人の時間に、部外者が口を挟むのも野暮ですし」
「はぁ」
「少なくとも『校内では何も問題を起こさない』と誓ってくれれば、今回はこれで話は終わりにしましょう」
何故だろう。今チラッと神野先生の心の声が聞こえた気がする。
「分かりました。ありがとうございます」
「私も気をつけます、神野センセー」
「よしよし良い子ね。それじゃ度会先生」
「はい、では私が引き継ぎます」
「学級担任でもない度会先生に、後をお願いするのも気が引けますけど」
「いえいえ」
そう言って神野先生はゴルゴ……じゃない、岬ちゃんを連れて音楽室を後にした。
あぶねぇ、サーティーンだったら死んでたぞ。
「────と、言うわけで二人とも?」
「「申し訳ありませんでした!」」
しんしんと降る雪の中。
別館として使われている音楽室だが、今はとても暖かく感じられた────。
──────────。
───────。
─────な訳ないだろ! 誰だこの写真撮ったヤツ!
今の今まで氷の棒を飲まされた気分だったわ!
あの時モードラで連射してたカメラマンか? ふざけろよお前!
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翌日の放課後。
「これはチャンスかも? と考える女子が増えました」
「なんDEATH党ー──────────────!?」
涼木さんからの報告を聞きオレはバグった。
場所? VD以来もはや「大特異点」と化した魔境、音楽室だよ!
「どーゆーコトー!?」
「例の雑誌を見てしまった生徒が、実はかなり大勢いまして」
涼木さんが証拠物品を取り出して机に置いた。
それを見て、クラシックギターを抱えていた玲華が思わず停止。
ピアノ練習に励んでいた山口が、やはり雑誌を手に取ってフリーズした。
ちなみに何故玲華がクラシックギターかと言うと、「弦の太さが練習にいい」といった理由らしい。
……いや、今はそんな事より。
「つまり?」
「少なくとも校内では、せんぱいは玲華せんぱいといちゃいちゃできないだろうと」
「別にどこでだってイチャつく訳ないだろ……で?」
「なので『校内であればアタック解禁では?』と再解釈されたもようです」
あ、もうダメ。
……って訳にはいかないよな。ちゃんと決めたしな。さてどうすべ。
オレが「考えろ、考えるんだマクガイバー!」しているその横で。
玲華と山口が二人、オレに聞こえないように打ち合わせを始め。
そして数分後、何故か涼木さんを手招きした。
「はい! せんぱいのためになるならよろこんで!」
ハキハキと答える可愛い後輩の姿に、オレは。
……悪い予感しかしなかったのは何でだろうな?




