二月・6 Can You Hear What I'm Saying ?
────さて。
あの破竹の勢い……、違うな。
めくるめく……、だと官能小説になるな、アホかオレ。
ええと。
まぁなんだ、色々あったバルジの戦車戦を(※多方面に迷惑をかけながら)乗り切ったオレだが。
あの日、玲華にどちゃくそ説教を喰らった反動からか、今は完全に弥勒菩薩の様な心持ちで日々を過ごしつつあった。
別に投げやりって訳じゃ無い。
放心とも違う。
ただただ日々の出来事を在るが侭に受け入れ、ちょっぴりぐらいは前向きに過ごそうかなーと思い始めていたんだよ。
そのつもりだったんだけどな?
所が、である。
数年ぶりに関東を襲ったドカ雪を窓越しに見ながら、効率の良すぎるダルマストーブに感謝をしつつ昼飯を食っていた時。
ポーン♪
「生徒の呼び出しをします。2年A組の初川くん、2年A組の初川さん。至急音楽室まで来なさい。繰り返します───」
校内放送で呼び出されるハメになった。
「トーちゃん、アチキらなんかやらかしたかなぁ?」
「何だろうな?」
あの日の翌週。
オレは度会先生以下、ファンクラブの幹部候補生(?)な青野、松元、山口、そして涼木さんにも深々と頭を下げ、ナントカ表面上は感謝の意を伝えられたので、一応は丸く収まったハズ……なんだが。
ここで悩んでいても仕方ない。
オレと玲華は大急ぎで食事を済ませ、音楽室に向かった。
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「ゴメンね二人とも、食事中に」
そして訪れた先では度会先生と、────何故か担任の神野先生の二人の教師が、ちょっぴり険しい顔で待っていた。
そしてその後ろには……、おや、ゴルゴンちゃんじゃないの。今日はどしたの?
「いえ別に構いませんが、一体何のご用でしょうか?」
「まぁ座ってちょうだい二人とも」
神野先生に言われ、オレと玲華は着席した。
「初川君、こっちの岬さんは知ってる?」
あ、ゴルゴンちゃんの名前初めて聞いた。
「はぁ、まあ。自分の開催する勉強会に、毎回顔を出してくれてる子ですよね」
ピンポンパンポーン♪
イマ鳴ランデエェ。
「実は彼女が持ってきたこの雑誌なんだけど」
そう言って神野先生が手渡してきた一冊はと言えば、カンカンだかランランだか知らんが、そんなタイトルの女性週刊誌だった。そしてその表紙には、
『絶対に返事の貰えるWDにしたい!』
と言った、いかにも! な文字が躍っていた。
「はぁ、これが何か?」
「トーちゃん、アチキにも見せて?」
玲華がパラパラとページをめくり始めるんだが、何故か全員が無言。すると。
「ん? んんー??」
「どした?」
何かを見つけたらしい玲華だったが、次の瞬間。
「アッー!」
今その声どうやって出した!?
人類には不可能な発音だぞそれ!
「とととトーちゃん! これ!」
「一体何事だ……よ……?」
おや?
玲華が開いているのは、多分メイン特集のページ。
この世のありとあらゆる幸せな爆発確定者を集めました! 的な写真が掲載されているその中の一枚に。
玲華と一緒にベースギターをお迎えに行った、あの十一月の駅で。
オレに抱きついて喜色満面な玲華と。
抱きつかれて困惑気味な風のオレが。
トップにデカデカと飾られていた。
「な」
「な」
「「なんじゃこりゃー!」」
二人の声が窓を震わせた。
耳が悪いはずのベートーヴェンさんがギョッとしていた。
この年のVDは土曜日でしたね。




