第五章 暗闇の捜索と二つの顔
本作は、2015年に製作されたSFアクション映画『レプリカント・イブ』の原作を基にノベライズした作品です。
怒涛の展開、クスッと笑えるドタバタ劇、そして熱い友情と少し切ないSF展開。映画版の世界観や勢いをそのままに、小説ならではのテンポでお届けします。初めての方も、映像版をご存知の方も、最後までワクワクしながらお楽しみください!
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少し離れた林の中、不気味に発光している墜落地点に向かって、暗闇の植え込みからヤスシが双眼鏡を覗き込んでいた。
「なんか見えたか?」
オサムが横から小声で尋ねる。
「異常なし。何にも見えない」
ヤスシは双眼鏡を下ろすと、隣で身を潜めているオサムとミツオの顔を見回した。
「やっぱり、行ってみようぜ」
オサムが二人を誘う。
「あの光のせいで、火花が出たのかな……」
フリーズしてしまったPC本体の画面を覗き込みながら、ミツオが呟いた。
「よし、行こう」
オサムが立ち上がって林の方へ足を踏み出す。
「行ってらっしゃい」
二人が同時に手をふる。
ヤスシとミツオは植え込みの陰にしゃがみ込んだまま、一歩も動こうとしていなかった。
「行かねえのかよ!」
呆れたように声を張るオサムに、ヤスシが震える声で言い訳を始める。
「映画で見たことあるんだ。中からアメーバみたいなのが出てきて、人間を食っちまうんだ……!」
ミツオも完全に怯えきった様子でそれに同調する。
「繭の中に入れられて、化け物にされるんだ……!」
二人の情けない想像に、オサムは深いため息をついた。
「なに、小学生みたいなこと言ってんだよ!」
「明日にすれば?」
ミツオが及び腰で提案する。
「明るい方が、なにかといいと思うよ」
「お前な、卒業したら自衛隊に入るんだろ! そんなんでいいのかよ!」
オサムがヤスシを指差して叱り飛ばすが、ヤスシは悪びれる様子もなく言い返した。
「安全だから入るんだよ!」
「……わかった。俺一人で行くよ」
オサムは呆れ果て、二人を置いて一人で林の奥へと歩き出した。
「なんかあったら呼ぶから、そこで待ってろよ!」
背中越しにそう叫ぶと、後ろからヤスシとミツオの無責任な声が聞こえてきた。
「何にもなかったら呼んでよ!」
「俺も!」
オサムが去った後、ミツオは手元のPC本体を見ながら呟いた。
「ああ……壊れちゃったのかな」
一方、オサムは月明かりすら届かない鬱蒼とした林の中を、慎重に歩みを進めていた。先ほど光が墜落したはずの場所だが、周囲は静まり返っている。
「誰かいませんか……」
恐る恐る声をかけるが、返事はない。
「……いませんよね」
オサムが安堵して息を吐き出した、その瞬間だった。
バサバサッ!
足元の草むらから、突然一羽の鳥が飛び立った。
「うわあっ!」
驚いて後ずさったオサムは、足元にあった何かに盛大につまずき、前のめりに倒れ込んでしまった。
「痛っ……」
転んだ先で何かに触れ、ふと視線を落すと、そこには、暗闇の中で人が倒れていた。
「うわあぁぁぁっ!?」
パニックに陥ったオサムは、ひっくり返った声で悲鳴を上げた。
その叫び声が静かな林に響き渡る。それを遠くの植え込みで聞いたヤスシとミツオは、
「わああっ!」
「逃げろっ!」
と我先にと跳ね起き、一目散にその場から逃げ出してしまった。
地面に倒れたまま、オサムは激しく波打つ心臓を押さえ、恐る恐る目の前に倒れている人物の顔を覗き込んだ。
「礼子さん……!?」
気を失って横たわっていたのは、先ほど怒って帰ってしまったはずの礼子と、瓜二つの顔をした謎の女――バイオレプリカントのイブだった。
その頃、ミドルエンド社のモニタールームでは、怒号が飛び交っていた。
「まだ見つからんのか!」
ドクターノアが、苛立ちを露わにしてモニターに向かって怒鳴りつけている。
モニターに映し出されているのは、夜の街へと捜索に出た神崎と松本の姿だった。
「申し訳ありません。このあたりに墜落したのは確かなんですが……」
神崎が申し訳なさそうに頭を下げる。
「言い訳はいらん! 早くイブを回収しろ!」
ドクターノアはそう吐き捨てると、通信を一方的に切った。
暗い夜道に取り残された神崎は、手元の赤いスマートフォン型の連絡装置を忌々しそうに見つめた。
「加速装置が壊れてたなんて、私たちのミスじゃないじゃない」
不満を漏らす神崎の横で、松本が冷静に意見を述べる。
「それより、GR IIIを連れてきたほうがよかったんじゃないか? 見た目は普通の女だけど、腕力は怪物並みなんですから」
「馬鹿なこと言わないでよ」
神崎は即座に却下した。
「あんな奴が街中歩き回ってたら、大騒ぎになってしまうじゃない。とにかく、手分けして探しましょう」
「ああ」
松本が頷くと、神崎は背後に控えていた黒いキャップと作業服に身を包んだ回収部隊の男たちを振り返った。
「お前たちも、イブを探せ」
「ハッ!」
男たちは短く返事をすると、闇に紛れたイブを回収すべく、夜の街へと散っていった。
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