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第三章 星空の異変

2015年製作の映画『レプリカント・イブ』の原作ノベライズ版です! 笑いあり、アクションあり、切なさありのドタバタSFエンターテインメントをお届けします。

■実写映画版も各VODで配信中! 出演:井上正大、岩田陽葵、倉田てつを、蝶野正浩、山本十三、他

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「そういえば……」

夜の公園のベンチで、オサムがふと口を開いた。コーヒーの入った紙コップを手に、隣に座る礼子に顔を向ける。

「あ」

何かを見つけたオサムは不意に、礼子の肩へと手を伸ばした。

「動かないで」

「えっ?」

急に真剣な表情になったオサムに、礼子は体をこわばらせる。

「虫が……」

オサムの言葉に、礼子の表情が一気に凍りついた。

「やだぁぁぁっ!」

悲鳴を上げて暴れる礼子。オサムは慌てて彼女の服についていた赤い虫――ムカデを払い落とそうと手を伸ばした。

「あ、待って、止まって! 止まって!」

しかし、パニックになった礼子をなだめようと焦るあまり、オサムの手が誤って礼子の胸をしっかりと掴んでしまった。

「ひゃあっ!」

悲鳴を上げる礼子。その拍子に地面に落ちたムカデは、カサカサと素早くベンチの陰へと逃げていく。

次の瞬間――パシィッ!

鋭い音が響き、オサムの頬に礼子の容赦ない平手打ちが炸裂した。

礼子は素早くバッグから赤い防犯ブザーを取り出すと、警戒するような目でオサムに向けた。

「今度やったら、防犯ブザー鳴らすわよ!」

「わざとじゃないんだ!」

必死に弁解するオサムの様子に、ハッとして我に返った礼子が「あっ……ごめんなさい」と申し訳なさそうに手を引っ込める。

「大丈夫。こんなの、全然大丈夫」

赤く腫れた頬を押さえながら、オサムは苦笑いで答えた。

「本当に?」

「うん。君にぶたれるなんて、嬉しいくらいだ」

「はははっ」

オサムの不器用な強がりに、礼子が小さく吹き出した。

「じゃあ、ぶたれるために触ったのかな? オサム君」

「そんな、意地悪言わないでよ、礼子さん」

そのやり取りを、植え込みの陰からヤスシが双眼鏡で覗き見ていた。

「いいぞ、いいぞ!」

ミツオも興奮気味に声を上げ、PC本体を操作しながらヘッドセットのマイクに口を近づける。

「待ってろよ……『見てよ、この今にも降ってきそうな星空。運命を信じますか?』」

ミツオの指示が、オサムの耳に届く。

「運命って……信じますか?」

オサムは夜空を見上げながら、ミツオの言葉をそのまま復唱した。

「えっ?」

唐突なオサムの問いかけに、礼子はきょとんとする。

「だって、この宇宙には数え切れないほどの星があって、その中の地球にも数え切れないほどの人類がいるじゃないですか」

オサムは、たどたどしくも必死に言葉を紡ぐ。

「その中でも、こうして僕と礼子さんが一緒にいるのって……運命だと思いませんか?」

「はぁ……まぁ、同じ大学で同じ学食だもんね」

礼子は少し呆れたように笑う。

「本当、運命ってたくさんあるのね」

「でも、こうして二人で見上げる星空は……天文学的にも、今の星空しか……」

オサムが言葉を濁したその時。

二人が見上げる星空の彼方から、一筋の強烈な紫色の光が飛来した。

「……なんだ、あれ!?」

ヤスシが双眼鏡を覗き込みながら叫ぶ。

「空襲だ、空襲だぁっ!」

パニックに陥ったヤスシが訳のわからないことをわめき散らす中、光は信じられないほどの速度でオサムたちのいる公園へと向かってくる。それは、ドクターノアの研究所から暴走状態のまま飛び去った、バイオレプリカントのイブだった。

光が近づくにつれ、異常な事態が起こり始めた。

植え込みに隠れていたミツオが手にしていたPC本体から、突如として紫色の火花が散り始めたのだ。

「うわっ、熱っ!?」

ミツオがたまらずPC本体を取り落すと、ヤスシも驚いて叫んだ。

「ど、どうした!?」

異常はオサムの身にも起きていた。

オサムが身につけていた末端装置とイヤホンから、激しい放電がバチバチと音を立てて発生したのだ。

「うわあああっ!」

オサムと礼子は悲鳴を上げ、オサムは光を避けるように礼子を庇って地面に伏せた。

次の瞬間、紫色の光の塊が、凄まじい轟音と共に少し離れた公園の林の中へと激突した。

夜の闇を真昼のように照らし出す強烈な閃光が公園全体を包み込む。

空から降ってきた謎の光に呼応するかのように激しい放電と火花を散らした後、ミツオのPC本体は画面を表示させたまま完全にフリーズし、オサムの末端装置も完全に沈黙してしまっていた。

本日もお読みいただき、ありがとうございます!

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