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第二章 不器用なデートと暴走する光

本作は、2015年に製作されたSFアクション映画『レプリカント・イブ』の原作を基にノベライズした作品です。

怒涛の展開、クスッと笑えるドタバタ劇、そして熱い友情と少し切ないSF展開。映画版の世界観や勢いをそのままに、小説ならではのテンポでお届けします。初めての方も、映像版をご存知の方も、最後までワクワクしながらお楽しみください!

◆実写映画版も各種VODにて配信中です! (出演:井上正大、岩田陽葵、倉田てつを、蝶野正浩、山本十三、他)

•Amazonプライムビデオ:https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0GVPQ4F1V/ref=atv_sr_fle_c_Tn74RA_1_1_1?sr=1-1&pageTypeIdSource=ASIN&pageTypeId=B0GVPRBHZM&qid=1779121686607

•U-NEXT: https://video.unext.jp/browse/credit/PER0235156/PRN0245517?mgc=HOUGA&td=SID0060960

「こんにちは、海野洋子です! 12月10日に新曲が出ます!」

画面の中で、フリルのついたピンク色のドレスに身を包んだ人気アイドル歌手、海野洋子が満面の笑みで語りかける。

PC本体の画面では、一面のひまわり畑を背景にした新曲『スコール』のミュージックビデオが再生されている。そこへ「新曲キター!」「洋子ちゃん待ってたよー!」といった熱狂的なファンたちのコメントが、弾幕のように次々と流れていた。画面の中のアイドルは、振り向きざまに髪をフワリとかきあげた。

その画面を操作しているのは、メカマニアの大学生、ミツオである。

彼が身を潜めているのは、夜の公園の植え込みの陰だ。そのすぐ隣では、友人でガンマニアのヤスシが、双眼鏡を目に当てて少し離れた場所を警戒している。

「ヤスシ、どうだ、様子は?」

ミツオが声をひそめて尋ねる。

「大丈夫。オサムのやつ、うまくやってるみたい」

双眼鏡を覗いたまま、ヤスシが答えた。

「そろそろ仕掛けていいんじゃないか、ミツオ」

ヤスシの言葉に、ミツオはPC本体に視線を戻した。

「よし。それじゃあそろそろ始めるか」

ミツオはPC本体の画面を操作し、アイドルのミュージックビデオから『恋愛シミュレーション』というタイトルのソフトへと切り替えた。

画面には「初めてのデートで」「ムードで決める」といった選択肢が並んでいる。

ミツオはインカム機能付きのヘッドセットを装着し、マイクを口元に引き寄せた。

「えーっと……オサム。もしもし、聞こえるか?」

ミツオの呼びかけの先――彼らが植え込みの陰から監視しているベンチには、一組の男女が座っていた。

主役の青年オサムと、そのデート相手である礼子だ。

二人は温かいコーヒーが入った紙コップを両手で包み込むように持ち、少し緊張した面持ちで並んで座っている。オサムの耳には小型のイヤホンが隠れるように装着されており、それはミツオのPC本体と繋がる末端装置に接続されていた。

ミツオからの通信に、オサムは思わず声に出して反応してしまう。

「聞こえる」

突然のオサムの言葉に、隣に座る礼子が不思議そうに首を傾げた。

「え? 何が?」

「あ、いや……これ……なんでもない」

しまったという顔で誤魔化そうとするオサム。咄嗟の言い訳が思いつかず、しどろもどろになる。

「ただ、こうして耳を澄ませると……」

『虫だ虫、なんとかごまかせ!』

末端装置のイヤホン越しにミツオの的確な指示が飛ぶ。

「虫! そうそう。虫の鳴き声が聞こえないかなと思って」

オサムは必死に笑顔を作って空を仰いだ。礼子もそれに釣られるようにして、耳に手を当てて夜の公園の静寂に意識を向ける。

しばらくそうしていた礼子だが、やがて小首を傾げて言った。

「うーん……何にも聞こえないわよ?」

オサムの不器用なデートが続くその裏で――次元の違うもう一つの戦いもまた、激しさを増していた。

ドクターノアが作り出したバイオレプリカントのイブと、重武装ロボット『GR III』の死闘である。

巨大な『GR III』の銃口が火を噴き、無数の弾丸が嵐のようにイブを襲う。コンクリートの壁が次々と抉られ、粉塵が舞い散る。イブは人間離れした身体能力でその弾幕を掻い潜っていく。

だが、『GR III』が胴体のミサイルポッドを展開し、無数のミサイルを一斉に発射した。

迫り来るミサイルの群れを前に、イブは自身の腕に装着された電子ブレスレットのボタンを押した。しかし、作動しない。先ほど『GR III』の装甲と接触した際、システムが物理的なダメージを受けていたのだ。

迫る死の気配の中、イブはやみくもにブレスレットのスイッチを連打する。

次の瞬間、殺到したミサイルが着弾し、凄まじい爆発を起こした。

夜の廃工場を真昼のように照らし出す猛烈な炎と爆煙。誰もが彼女の破壊を確信したその時だった。

バチバチッ! と激しい放電の音が響き、ミサイルが巻き起こした爆発の炎の中から、強烈な紫色の光の塊が弾け飛んだ。

ギリギリのところでスイッチの連打が引き金となり、加速装置が致命的な誤作動を起こしたのである。

暴走状態に陥ったイブは、全身から紫色の放電を纏いながら光の弾丸となって、コンクリートの壁や床に何度も激突する。

まるでコントロールを失ったピンボールのように凄まじい速度で空間を跳ね回ると、最後は分厚い天井を勢いよくぶち破り、そのまま夜空の彼方へと飛んでいってしまった。

後には、もうもうと立ち込める爆煙と破壊の痕跡だけが残された。

イブを取り逃がした『GR III』は無傷のまま立ち尽くし、ただ機械的な駆動音を響かせながら、彼女がぶち破った天井の大穴を静かに見上げているのだった。

本日もお読みいただき、ありがとうございます!

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