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第一章 闇を駆ける影と、動き出した歯車

本作は、2015年に製作されたSFアクション映画『レプリカント・イブ』の原作を基にノベライズした作品です。

怒涛の展開、クスッと笑えるドタバタ劇、そして熱い友情と少し切ないSF展開。映画版の世界観や勢いをそのままに、小説ならではのテンポでお届けします。初めての方も、映像版をご存知の方も、最後までワクワクしながらお楽しみください!

◆実写映画版も各種VODにて配信中です! (出演:井上正大、岩田陽葵、倉田てつを、蝶野正浩、山本十三、他)

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•U-NEXT: https://video.unext.jp/browse/credit/PER0235156/PRN0245517?mgc=HOUGA&td=SID0060960

夜空に、不気味な紫色の三日月が浮かんでいた。

打ち捨てられた巨大な廃工場の暗がりの中を、音もなく前進する者たちがいる。完全武装した屈強な兵士たち――強大な軍事力で知られるゼノビア国の精鋭部隊である。彼らは最新鋭のアサルトライフルを構え、張り詰めた空気の中で周囲への警戒を強めていた。

その暗闇の奥から、足音一つ立てずに影が近づいてきた。黒いレザーのボディスーツに身を包み、目元をサングラスで隠した謎の女だ。重火器で武装した部隊に対し、彼女は丸腰である。しかし次の瞬間、女は常人の限界を遥かに超えた動きで、先頭の兵士の懐へと飛び込んだ。

空気が裂け、遅れて銃声が響き渡る。放たれた銃弾はことごとく空を切り、コンクリートの壁に無数の火花を散らすだけだった。女は流れるような身のこなしで次々と兵士たちの銃を叩き落とし、強烈な回し蹴りや急所を的確に穿つ打撃を叩き込んでいく。人間の筋力を凌駕するその圧倒的な力になすすべもなく、実戦経験豊かなはずのゼノビア軍の兵士たちが次々と宙を舞い、床に沈んでいった。

さらに女が腕の電子ブレスレットに触れると、デジタルタイマーが発光し、空間全体が異様な紫色の光に包まれた。時間の流れそのものが歪んだかのようなその光の中で、女は次元の違う加速を見せ、残る部隊を瞬く間に制圧してしまった。

その常軌を逸した戦闘の一部始終を、壁に「ミドルエンド社」のロゴが掲げられた最新鋭のモニタールームで、各国の軍関係者たちが見つめていた。兵器の買い付けに訪れた将校や視察団たちは、モニターに映る信じがたい光景に言葉を失っている。

「なんてこった。俺が手塩にかけて鍛え抜いた屈強な兵士たちが、いとも簡単に倒されてしまうとは。この小娘はいったい…」

ゼノビア国の将軍が、黒い軍服越しにも分かるほど肩を震わせ、サングラスの奥で驚愕の声を漏らした。彼らの前に進み出たのは、白衣を着て黒いグローブをはめたミドルエンド社の天才科学者、ドクターノアだった。

「私の科学が作り出した、戦闘用バイオレプリカントです」

自信に満ちたドクターの言葉に、将軍が身を乗り出す。

「人間なのか?」

「いいえ」

すかさず答えたのは、ドクターの隣に立つ女の助手、神崎だ。ドクターノアがゆっくりと繰り返す。

「バイオレプリカントだ」

「なんだ、ロボットか」

将軍が鼻を鳴らすように言うと、ドクターはふっと笑みを浮かべた。

「人間でも、ロボットやサイボーグでもありません。バイオレプリカントなのです。まあ、見ていてください」

モニターの中の映像が切り替わる。青白い光に照らされた地下通路を、女――バイオレプリカントの「イブ」が、奪った拳銃を構えながら慎重に進んでいた。

突如、凄まじい地響きと共に、分厚いコンクリートの壁が粉々に砕け散った。粉塵を巻き上げて姿を現したのは、重武装を施された巨大な戦闘用ロボット「GR III」(ジーアールスリー)である。

イブは即座に発砲するが、弾丸はGR IIIの分厚い装甲に弾かれ、虚しく火花を散らす。次の瞬間、GR IIIが圧倒的な質量を持った鋼鉄の腕をイブに向かって振り下ろした。イブは間一髪でその強烈な一撃を躱すが、その際、イブの腕の電子ブレスレットとロボットの機体がかすかに接触し、暗がりの中で小さな火花が散った。

息を呑むような攻防を見つめながら、ゼノビア国の将軍が唸る。

「素晴らしい」

「どうですか、この俊敏な動き」

ドクターノアが得意げに両手を広げる。

「普通の人間では、GR IIIとここまで互角に戦うことはできません」

モニターの中では、巨大なロボットとイブの死闘が続いている。

「一見しただけでは、まさかイブが私の科学で作り出されたバイオレプリカントだとは誰も気がつくまい。な、神崎」

「ごもっともです。ドクターの科学に不可能はありません。筋力も、人間の4倍はあります」

神崎の淀みない説明に、将軍はたまらないといった様子で声を上げた。

「我が国の軍隊にも、彼女のような兵士を配備できるのか?」

「お買い上げいただければ」

神崎が微笑むと、将軍は興奮を隠しきれずに言った。

「欲しい。我が国に欲しい」

「いかがです皆さん。お国の軍隊に導入しませんか」

ドクターノアが他の視察団を見回してアピールする。すると、人民服を着た男が、訝しげに口を開いた。

「しかし、同志神崎。これではロボットやサイボーグの方がパワーがあるのでは?」

神崎は表情を変えずに毅然と答える。

「有機体でこのパワーを出せることが画期的なのです。ロボットやサイボーグでは、空港のセキュリティゲートを通過できませんから」

さらに、もう一人の男の助手である松本が、静かに言葉を添えた。

「スパイとしても、その利用価値は大変なものです」

画期的な兵器としての利点を説くものの、他の軍関係者たちからは依然として懸念の声が上がる。軍服を着た女性将校が眉をひそめた。

「GR IIIと戦うには、力の差がありすぎるのではないですか」

隣に座る男性将校も同意するように言う。

「我々としては、こちらのGR IIIの方が…」

各国の代表たちの不安を打ち消すように、ドクターノアは力強く言い放った。

「大丈夫です。そのために電子ブレスレットを付けさせてあります。いざとなれば加速装置で、GR IIIと完全に互角に戦えます」


本日もお読みいただき、ありがとうございます!

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