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伝説の大剣豪、ラーメン屋を始める  作者: うどん


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第5話:究極のダイエットラーメン

 時は流れて――約束の日を迎えた。


 いつも通り、店は開店し。

 お客さんたちへ最高のラーメンを提供した。

 そして、ランチタイムが終了し……ゆっくりと扉が開かれる。


「こ、こんにちは!」

「……お邪魔します」

「おぅ! 待ってたぜ!」


 入って来た二人の女性。

 知り合いであるが、何時もの装いとは違う。

 キヨコちゃんは鎧を脱いでおり、ラフな格好だ。

 魔女の方もローブではない……が、喪服のような感じだな。


 全身黒尽くめであり、長いスカートに胸には白い花のアクセをつけている。

 とんがり帽子は無しであり、顔も良く見えて……ん?


「なんかさ……目の下にクマがねぇか?」

「え、あ、あの……じ、実は、今日が楽しみ過ぎて……き、昨日は一睡もできなかったんです」

「この子、すぐに興奮する癖があるんです」

「き、キーちゃん!」

「本当の事でしょう?」

「うぅ!」


 楽しみで眠れなかった。

 俺の料理を心待ちにしていたのだ。

 料理人にとっては最高の言葉であり、俺は鼻をこすり礼を伝えた。


「さ、座ってくれよ。ラーメンはすぐに出すからよ……悪いな。こいつらも一緒で」

「よろしくお願いします!」

「どもっす」

「あ、は、はいぃ」

「……さてさて、どんなものが出て来るのか。ふふ」


 ルミナスもレントも、今日の日まで一緒に頑張ってくれた。

 だからこそ、こいつらにも俺の完成したラーメンを食べてもらう。

 最高の瞬間は、皆、同じ時に味わってもらいたかった。

 だからこそ、最後の調整は俺だけで行っていた。


「さぁ――腕を振るうぜ!」

「「「……!」」」


 俺は頭に布を巻き、腕を捲る。

 そうして、早速――調理を開始した。


 温めた丼――は、今回は使わない。


 逆であり、保存ボックスから冷やした丼を四つ出す。

 それを並べてから、その中に醤油ベースのかえしを入れた。


 次に行うのは、麺の用意だ。

 おからの粉をベースに作った麺を手に取り。

 それを熱湯に入れたざるへと入れる。

 この時に軽く箸で混ぜるだけにし、そのまま後方にある特殊な鍋に入れた液体を見に行く。

 蓋を取れば、凄まじい熱気が飛び出してきた。


 ぐつぐつと煮えたぎるマグマのようなスープ。

 その色はほぼ透明だ。

 中には何も入っておらず、灰汁すらも出ていない。

 一見すれば水のようなそれだが、これこそが今回のラーメンの柱だ。

 俺は慎重にこれまた特注のお玉を使ってかき混ぜる……よし!


 俺はお玉を脇に置き、麺の方へと行く。

 そうして、適度に温められたのを確認し――ざるにあげる。


「いつもより早い?」

「バリカタかな?」

「ばりかた? 何すかそれ?」

「え、あぁ、麺の硬さの事で――」


 何かを話している。

 が、今は調理に集中だ。

 湯切りを済ませて、麺をキンキンに冷えた器に先にいれた。

 何時もの工程とはまるで違う。

 本来であれば大きな間違いだが、今回はこれでいい。


 そうして、すぐに出汁の元へと戻り。

 お玉を手に取って、中身を掬う。

 それを俺は丼の中へと――ぶちこむ。


「「「――!!」」」


 瞬間、じゅわっという音と共に蒸気が噴き出す。

 何も見えない中でも、俺は一滴も零す事無く出汁を掬い。

 寸分の狂いもなく器へと注いだ。

 そうして、その一連の流れを終えて、取り出しておいた表面が真っ黒なチャーシューを切り分ける。

 それを一つの丼に三枚で、凍らせておいたネギも散らして……完成だ。


「お待ち!!」

「「「わぁ!!」」」

 

 俺はほどよく熱々のラーメンの運んでいく。

 彼女たちは目の前のラーメンに感嘆の息を漏らしていた。

 一見すれば、少し色味の薄い醤油ラーメンだ。

 が、今回のラーメンは正にダイエットに相応しい代物だ。


 俺はキヨコちゃんにレンゲと箸を渡し。

 魔女たちにはフォークを――


「あ、私も箸でお願いします」

「……使えるのか?」

「え、あぁ、はい! 私も元日本人なので!」

「また、にほん人か……やっぱり、ラーメンの起源は……まぁいいや。さぁ、食ってくれ!」


 俺は今は会話は無しだと、それぞれに道具を渡し。

 食べるように手で勧めた。

 すると、全員が待ってましたと言わんばかりに食べ始める。


「「いただきます」」

「「いた、だき……ます?」」


 にほんの風習らしいことをし食べ始めるキヨコちゃんたち。

 レントたちも真似をしてから食べ始めた。


 熱々のスープの中に箸を沈ませる。

 そうして、軽く麺をかき混ぜれば醤油の上品な香りと濃厚な鳥ガラの旨味が部屋中に漂う。


「ふぁぁぁこれこれぇぇ♡」

「いい香りぃぃぃ……で、でも、こんなに濃い匂いは」

「心配いらねぇよ。俺を信じてくれ!」

「……は、はい! いきます!」


 魔女はそういって箸で麺を掴んで豪快に啜り――大きく目を見開く。


「ふんんんん!!? ふんーーー!!」

「こ、これ!? 何時もの麺とは違う。で、でも、歯ごたえがあって、スープの味が絡み合って……うまあぁぁ♡」


 彼女たちはおからの粉で作った麺を気に入ってくれていた。

 レントたちもであり、鼻息を荒くして興奮している。


「そのラーメンの麺はおからの粉で作ってある。おからの粉は糖質が低い……と思う。ダイエットには抜群だ。が、本来、おからの麺でラーメンを作ろうと思えば、どうしても麺自体がつるっとして柔らかくなっちまう。そういう方が好きって人間もいるだろうが、本場を知っているだろう魔女ちゃんだったら、出来る限り同じものを喰わせたい。そこで、俺が考えたのが――煉獄鳥のレシピさ」

「れ、煉獄鳥って……星7の魔物の?」

「まさか、私の為に、そんな貴重な……店長さん!」


 何故か驚いたりうるうるしたりしている二人。

 が、煉獄鳥の調達自体は別に簡単だと伝えておいた。


「重要なのは煉獄鳥の肉や骨などの素材の効果さ……煉獄鳥の再生能力と永遠に炎を生み出す技。それらはこいつの体内の機能が大きく関係してるんだが。その中でも、傷を修復して再生する機能ってのは麺にも大いに役に立つ」

「「「……?」」」


 俺は食べながら聞いてくれと促して説明する。

 再生能力とは、元の肉体へと戻す力と言い換える事も出来る。

 つまり、食材として使えば体内で傷ついた部分を癒したり。

 悪い部分を解消してくれる効果なんかもある。

 が、麺において大きく作用する点は――硬さと弾力だ。


「麺ってのは湯に通さなきゃ食えたもんじゃねぇ。絶対にそのままだったら腹は壊すだろうさ。が、ゆですぎてもやわらかすぎてまずいだろうよ……おからの麺もそうさ。長くは茹でられねぇ。そもそも、短時間じゃなきゃある程度の硬さに出来ねぇからな……だけど、煉獄鳥の涙を使ってとった出汁を使えば――硬さと弾力は取り戻せちまう」

「……あぁ、なるほど!! 茹でてるけど、元のような感じって事すか!」

「うーん、まぁそんなとこだな! 勿論、完全に戻ってたら食えねぇけどよ。あるギリギリまで元の状態に近い感じで戻る。つまりだ。通常では出せねぇような状態でありながら、茹でた状態っていう矛盾で生まれた――究極の麺さ!」

「う、うあぁ、す、すごい。あ、頭が――美味しいぃ♡」


 魔女は説明を聞きつつも食べてくれていた。

 この煉獄レシピは元々、生食用にと考案していたものだ。

 生のたまごに、生の肉。

 ありとあらゆる生をそのまま食べたい衝動。

 それから考案していたものであったが、おから麺に有効活用できた。


 通常の麺であれば、元の状態に近いようにする必要なんてない。

 そうしてしまえば、硬すぎて食えたものじゃねぇからな。

 が、おから麺であれば元々がほどよいからこそいい感じに仕上げられる。


「後は、ラーメンにとって重要なスープづくり。煉獄鳥の骨から抽出した旨味は、他の鳥ガラとは比べ物にならねぇほどの濃厚さを持っている。そして、濃厚な旨味があっても煉獄長は燃焼の効果を持っているからこそ、余分な脂質も糖質も持ち合わせてはいない。体が燃えるからこそ、人間とは別の体組織になってるんだよ」


 俺は語る。

 煉獄鳥の骨からスープを作る場合は、色々と準備が必要だと。

 先ずは、骨がとろとろになるまで煮詰める為に。

 超高火力にも耐える鍋が必要になる。

 だからこそ、俺は他の街にいる知り合いの鍛冶屋を頼り。

 特注のアダマンタイト製の大鍋を譲ってもらった。


 その中に、水ではそもそもがそんな火力では蒸発してしまうからこそ。

 血か涙のどちらかを使うか迷い。

 結果的にはレントから血は色々と食欲が失せると聞かされて、涙を使う事を決めた。


 煉獄鳥の体液だからこそ、ちょっとやそっとの熱では蒸発はしない。

 地獄谷のそこから噴き出す黒炎をに鍋を近づけて。

 じっくりことことと煮て行く事――約3日。


 何度も何度も、営業が終われば自らの足で確認に行き。

 頃合いを見て鍋を回収。

 そのまま、時間を掛けて常温にて鍋を冷ます事――約2日。


 2日立っても熱々であったが。

 それくらいの熱は必要だった。

 後は炉の上に置き、弱火で調整していき。

 約束の日に、用意しておいたキンキンの丼へと注いだ。


 急激な温度差。

 それによって発生した蒸気は、スープに含まれていた不純物を蒸気として排出。

 あく抜きのような工程であり、残った純粋なスープはかえしとまざった。

 そうして、煉獄鳥の胸肉を使って仕込んだ黒いチャーシューを添えれば、特製の魔物ラーメンの完成さ。


「ラーメンにとって重要な味のインパクト。それを損なう事無く、麺の質感もしっかりと。後は、彩りとしてネギを散らして、チャーシューは表面は黒くても中はピンク色に仕上げた……お?」


 俺がべらべらと気持ちよく語っていれば――ごとりと丼を置く音が聞こえた。


 見れば、魔女さんが顔を破顔させて色っぽい表情をさせていた。

 紅潮した頬に、眼の下のクマはラーメンの効果によって消え。

 発汗作用によって血流もよくなっているんだろう。


「どうだ? 俺の――ラーメンの味は?」

「さい………こぉぉぉですぅぅ……こんなに美味しいラーメン、今まで……いえ、前世でも食べた事、ないです」

「ぜ、前世? そ、そうか。は、はは」


 褒めてくれているのは分かる。

 が、いきなり前世なんて言葉を使うもんだから面食らった。

 俺は席払いをし、他の三人も見て……おぉ。


 キヨコちゃんは涙を流し余韻に浸っている。

 レントはスープをがぶがぶと飲んでいた。

 ルミナスはずいっと俺に丼を向けて……はぁ、たくよ。


「……待ってろよ」

「はい!!」


 俺は厨房へと戻り――魔女が引き留めて来る。


「あ、あの!! 私!! その……ミリアリアです!! ミリアリア・バーンスタインです!!

「おう! 俺はオウマだ。よろしくな、バーンスタイ」

「――ミリーでいいです!!」

「お、おぅ。じゃ、ミリーちゃんだな!」

「は、はい……えへへ」


 ミリーちゃんはニコニコと笑っている。

 大人のお姉さんのような見た目だが。

 その振る舞いは幼い少女のようだ。


 変わってはいるが、面白い子だと思って――ルミナスが声を上げる。


「お、思い出しましたぁ!」

「何がだよ?」

「バーンスタイン! ミリアリア・バーンスタイン!! “黒の魔女”です!!」

「黒の魔女……あぁ、あれか。闇魔法を極めたっていう魔法院の天災……へぇ、ミリーちゃんなのか」

「え、い、いや、そ、そのぉ……へ、へへ」

「……この子、闇魔法を極めたって言うのに、その自覚が無いんですよ。この前だって、オーガの軍勢を闇魔法で殲滅したのに、そんなに凄い事はしてないって顔して……ミリー、もっと誇りを持ちなさいよ?」

「うぇ? で、でもぉ。ただ遠くから魔法で倒してるだけだし、わ、私なんかよりも、前衛の人たちの方が」

「……チッ」

「し、舌打ちはやめてよぉ」


 彼女たちは仲良さげに会話している。

 俺はくすりと笑い、おかわりがいるかと尋ねて――全員が空のどんぶりを掲げる。


 

「「「おかわり!!」」」

「ふっ――承った!!」


 

 俺は全員の丼を回収し。

 急いで新たなラーメンを作っていく。

 全員の顔を見れば、最高の笑顔だった。


 俺は今日も最高の笑顔が見せてくれた事に内心で感謝し。

 気持ちの良く最高のラーメンを作っていった。

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