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伝説の大剣豪、ラーメン屋を始める  作者: うどん


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第4話:食材の要は魔物である

 ダイエットラーメンの開発期限一週間。

 初日の夜、店舗の上にある居住区、そこの俺の部屋にレントたちには集まってもらった。

 

 話し合い……というよりは、ラーメンを作るのに必要な材料を発表した。


 結果、レントは恐怖で顔を引きつらせて。

 アホのルミナスはキラキラと目を輝かせていた。

 

 ダイエットラーメン製作に必要な材料集めは翌日から開始した。

 勿論、臨時で店を休む事は常連たちには伝えてある。

 そして、店の前にも張り紙を出しておいた。

 レントは麺の作製に必要な材料を買い出しに行かせて――俺たちといえば。


「師匠!! この上で間違いないんですね!?」

「あぁ、この山の頂上に――煉獄鳥(れんごくちょう)は生息してやがる」


 標高5000メールを優に超える山。

 その切り立った崖を腕力だけで登っていく。

 片や鎧を着こんだ女騎士に、片や三十歳を超えたおっさんだ。

 持っているものといえば、伸縮自在のロープに剣が一本。

 それも市場で安売りしていたなまくらだ。


 凍えるような寒さ。

 その頂上は此処よりも遥かに熱気に満ちているだろう。

 それもその筈であり、あの煉獄鳥が住処にしているからだ。


 煉獄長といえば、全長は五十メールを優に超え。

 全身に鋼鉄をも溶かすほどの炎を纏った鳥型の魔物。

 ギルドで発行されている魔物図鑑では、その危険度は“星7”だ。


 一番上が星10であり、一番下は星無し。

 星無しは魔物でも人間にとっては脅威ではない個体を指し。

 星1から人間に危害を加える恐れがある個体になる。

 星3までが、冒険者の中でも、熟練の存在が相手にする個体で。

 恐らく、ギルドの中でもトップクラスの冒険者でも星5が精一杯だろう。

 良くて6であり、7は恐らくはトップ冒険者たちが徒党を組んで挑む強敵。


 そんな強い魔物相手に俺たちはたった2人。

 素人からすれば、明らかに無謀だと思うだろう。

 が、俺もルミナスも星6や7なんてのは当たり前に戦ってきた。

 一人でも十分な相手で、油断はしていないがなまくらでも戦える。


 そのまま勢いを衰えさせる事無く。

 俺とルミナスはノンストップで崖を登っていく。


 登って、登って、登って――遂に、山頂へとたどり着く。


「流石に……あちぃな」

「はい! 熱々です!」


 途中から気温が明らかに変化していた。

 山頂へと近づくほどに熱くなっていき。

 山頂につけば、中心の魔物の骨で作った巣を中心に熱気が噴き出していた。

 火山のすぐ近く、いや鉄鍋の中で炒められる材料みてぇな感じだ。

 俺はたらりと汗を流しながらも、剣の柄に手を置き一歩を踏み出して――瞬間、凄まじい殺気が駆け抜けていく。


「――――ッ!!!!!!」

「師匠、来ます!」

「……そこにいろ。俺がやる」

「師匠? ですが」

「――お前は荷物持ちだよ」


 俺はそれだけ言って――駆ける。

 

 瞬間、骨の住処から炎の柱が噴き上がる。

 そうして、その炎が鳥の形を成し――襲い来る。


 紅蓮の炎が無数に放たれて。

 それが瞬きの合間に眼前を埋め尽くし――駆け抜ける。


 一歩の踏み込みで、間合いはゼロ。

 煉獄鳥は鳴き声をあげながら、俺の足元から炎を――空を飛ぶ。


 奴の攻撃を回避。

 そのまま空を蹴りつけて空を飛ぶ。

 奴の炎の攻撃は無限に放出されて。

 それが執拗に俺を狙う。


 空を飛び――回避。


 回避、回避、回避回避回避回避回避――周りが炎に包まれる。

 

 俺はその全てを視界に納めて、剣の柄を握り――抜剣。


 一太刀にて全ての炎をかき消す。

 ただの斬撃による風圧。

 が、刃の形を成した切断の効果を持った風の刃。

 見れば煉獄鳥の体も切れていて――再生。


 そのまま奴は翼を広げて――炎の竜巻を発生させる。


 蜃気楼が見えるほどに空気中と地上の水分が蒸発し。

 魔力を薄く纏っている俺の皮膚は乾燥していく。

 凄まじい熱気、鋼鉄をも溶かす炎の渦。

 俺はそれを見て――突っ込む。


 連続して空を蹴り、速度を上げる。

 加速しながら、俺は剣を鞘へと納める。

 そうして、静かに吐息を吐き――


 

「――風断(かぜたち)

「――――ッ!!!」



 技の名を呟き――両断。


 炎の竜巻を炎を纏わせた斬撃によって切断。

 そのままその隙間を通過し、静かに剣を鞘へと納める。

 煉獄鳥は再生を試みただろう。

 が、炎はパラパラと四散し消えて行く。


 魔物にとっての心臓――核を砕いた。


 如何に、無限に再生が出来る存在でも。

 核を精確に砕かれれば再生は出来ない。

 奴は最後の抵抗にと炎を噴き出し――地上から青白い魔力の太い線が走る。


「師匠!」

「……けっ」


 馬鹿みたいな魔力を使った単純な魔力の放出。

 それによって煉獄鳥の最後の抵抗もかき消されて。

 俺はゆっくりと山頂に着地する。

 遅れて煉獄鳥の死体が山頂にて激突した。


 俺は服についた火の粉を手で払う。

 そうして、静かに息を吐き――


「うし、じゃアレを担いで――“地獄谷(じごくだに)”にもう一回戻るぞぉ」

「はい!!」


 ルミナスはびしりと敬礼。

 煉獄鳥を見れば、炭のように真っ黒な皮膚が露になっていた。

 毛は無くつるつるで、見かけは鳥の丸焦げであるが。

 ほとんどの奴は煉獄鳥の本体があんな姿なんて知らない。

 およそ、食欲をそそらねぇ見た目だが……こいつは絶対に必要だ。


 肩にたすき掛けしていたロープを展開。

 そのまま、死体へと近づいて――


 

 ◇



 煉獄鳥の討伐、そして地獄谷に行っての大掛かりな仕込み。

 それを終えて、街へと帰還し。

 レントと合流して、これからの段取りを伝えて――夜の八時。


「……で、これって使えるんすか?」

「あぁ勿論。食感はちっと変わるが、それもまた面白れぇんだよ」

「見かけはあまり変わりませんねぇ?」

 

 俺はレントとルミナスの視線を受けながら。

 厨房にて、黄色い塊をコネコネと練っていた。

 レントが買って来てくれた材料を合わせて麺の生地をこねている。


「でも、何で麺まで新しく作るんですか? 別に対して変わらないじゃ……」

「確かに、油であれば分かりますが、別に麺には油なんて使いませんしね。うーん」


 二人は俺の麺づくりに疑問を抱いている。

 俺は知らなければ分からないだろうとくすりと笑う。


「まぁ、これはおやっさん……俺の師匠の受け売り何だがな。料理ってものには、糖質とか脂質、たんぱく質ってもんがあんだよ。簡単に言えば、糖質は甘いって感じるもんで、脂質は油とかだったか? たんぱく質は、肉とかのあれだよ……で、だ。今まで作ってたラーメンの麺ってのはな小麦粉で作ってただろう? アレってな。実は結構、太りやすいんだよ」

「……えっと、それって……脂質ってのが多いって事ですか? いや、でも、別に油っぽくは」

「だよな! 俺もおやっさんにそう言ったんだよ。そしたらさ、脂質も太る事に関わってるが、実際には糖質ってのも問題らしい……その糖質が、小麦を使った麺には割と多いんだよ」

「……あぁ、確かに。パンなども良く噛んで食べれば甘いですよね!」

「あぁ、そうか……じゃ、麺の材料、そのおから? の粉に変えれば」

「そ! おからは豆腐を作る過程で出来るカス……って言ったらあれだけどよ。兎に角、元が豆腐だからな。豆腐ってそんなに甘くねぇだろ? それに、昔から豆腐は痩せるのにいいらしい。一回だけ、おからの粉を捨てようとしてるのを見て、それを豆腐屋から譲ってもらってな? それで麺を作ってみたんだがな。これがまぁ中々の出来でよぉ……ほら」

「「おぉ」」


 綺麗に丸めたおからの粉で作った生地を見せる。

 見かけは今までの麺と同じだ。

 ちょっとつるっとして、柔らかめになっちまうが。

 あのスープさえあれば、それも心配はいらねぇ。


「後は、麺を伸ばして綺麗に切って行って……それと、煉獄鳥の肉をたれに漬け込んでおけばいい……まぁ染み込むまでには三日は掛かっちまうがなぁ」

「そ、そんなにっすか?」

「あぁ、まぁ魔物ってのはな色々と面倒でよ。上手い事使えれば、美味いのは美味いんだが、色々と手間暇が掛かっちまう……なるべく、素早く提供できるものがベストだったが……まぁお客さんの願いを叶える為ならいたしかたねぇよ」


 もしも、これから注文が増えるのであれば。

 定期的に煉獄鳥を仕入れる必要がある。

 が、調達自体は別に難しくはねぇ。


 煉獄鳥はそれなりに数はいる。

 人里にも滅多に現れないからこそ、結構、繁殖しているらしいからな。

 恐らく、今のストックが尽きた頃には、あの山頂にまた別の煉獄鳥が住み着いているだろう。

 アレほどに奴らにとってベストな環境は無い。

 凍えるような寒さであり、空気は薄く、雨の影響も受けない。


 ……まぁ好立地だからこそ、中々の存在しか済まねぇがな。


 あの骨の山は他の煉獄鳥のものだろう。

 縄張り争いは頻繁に起きていた。

 が、別に俺たちにはどうでも良い事で……よし。


「おぉ、良い感じっすね」

「うぅ、美味しそうです!」

「……まだ食うなよ?」


 俺は涎を垂らす馬鹿を警戒する。

 綺麗に果物ナイフで斬られた生地。

 完璧な長さであり、ほどよく弾力もある。


 一応、この後、試しゆでしてからこいつらに試食してもらう。

 スープ無しで申し訳ないがな。


「ふぅ、これなら何とかなりそうだな」


 布で汗を拭う。

 俺は頭の中で、お客さんが喜んでくれる顔を想像し――頬を綻ばせた。

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