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伝説の大剣豪、ラーメン屋を始める  作者: うどん


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第6話:世界への第一歩に必要なもの

「へい! ダイエットラーメンお待ち!」

「わぁ! これこれぇ! んーいい香りぃ♡」

「店長さーん! こっちもダイエットラーメンの小一つね!」

「あいよ! ダイエットラーメン小入りました!」


 何時もは疎らな客の入り――が、ここ最近は違う。


 客層が激変し、見渡す限りの女性たちで。

 誰もかれもがローブを纏った魔女さんたちだった。

 三日前に、店の外が騒がしいからと何事かと思って外を見れば。

 何と人が並んで待っていた。


 慌てて店の準備を整えて開店すれば。

 お客さんたちはダイエットラーメンを注文していくのだ。

 何でも、ミリーちゃんがお友達に宣伝してくれたようで。

 魔女の業界では超有名人である彼女の一押しならばと、大勢の魔女さんがやって来た。


 閑古鳥が鳴いていたウチでは、正に天からの恵みに等しい。

 俺は気持ちの良い忙しさに嬉しさを感じながら、笑みを浮かべて今日も今日とて全力でラーメンを作っていく――


 

 ◇

 


「ふぃぃぃ疲れたぁぁぁ」

「お疲れ様です!」

「お疲れっす……いやぁ、でも、まさかここまでお客さんが増えるなんて……嬉しいっすね!」

「まぁなぁ」


 俺たちは二階の共用スペースでくつろぐ。

 四角いテーブルに、椅子を並べて。

 天井の窓から見える月を眺めながら、酒を飲めば最高だ。

 レントもお気に入りのぶどうジュースを飲み、アホはバカでかい水筒で水を飲んでいた。


 時刻は夜であり、今日は屋台の営業はお休みだ。

 優雅にくつろぐ時間であり、俺たちはただぼけっと過ごし……あぁ、でも。


「……魔女の界隈ではダイエットラーメンが人気になったが……いかんせん、その影響で一般人たちが遠のいちまったなぁ」

「……まぁ一般人にとってみれば、魔女って結構、怖い部類の人たちですからねぇ」

「そうなんですか!?」

「え、お前知らねぇのか?」


 俺は少し驚きながらも説明する。

 現代では、魔法というものが広く普及はしていったが。

 それでも、一般人が使えるものは簡単な魔法だけだ。

 小さな火を灯したり、洗濯ものを乾かす為のそよ風をふかしたり。

 だからこそ、魔女と呼ばれる魔法のプロが使う魔法を想像すれば誰もが恐怖する。


 伝説でいえば、山を動かしたり海を割ったり。

 一般人からすれば、超常現象を引き起こせる存在が魔女や魔法使いだ。

 だからこそ、普通であれば危険な存在に近づこうと思う奴はいない。

 その上、魔女という存在に関しては古から続く悪い思想が関係していて……。


「……大昔の事でいやぁ魔女裁判なんていかれたもんがあってだな。魔法を許可なく使えば死刑だぜ。男の中でも、選ばれた人間だけ! 女なんてもっての他。女の魔法使い、魔女ってのは災いを引き起こすってんで……まぁ兎に角、因習みてぇなもんで古い人間なら今だに魔女を毛嫌いしてんだろうよ」

「なるほど。それはお辛い事ですねぇ」


 ルミナスは悲しそうな顔をする。

 まぁ現代では、魔女への偏見は緩和されている。

 簡単な魔法であれば使える人間だってちらほらいるんだ。

 それに誰でも魔法を学ぶ機会はあり、素養さえあれば大魔法使いにもなれる。

 良い時代であり、学問を身分に関係なく自由に選べるってのは素晴らしい事だ。


 ……まぁ繁盛しているのは良い事だけど……このまま魔女さんたちだけってのはなぁ。


 俺はコップを机に置き両手で顔を覆って天を仰ぎ見る。

 

「俺はぁ世界中の人間にラーメンを食ってもらいたいんだよぉぉ」

「……それでしたら、良い話がありますよ?」

「あぁ? 何だよ。不安だなぁ」

「ふふふ、私は師匠の一番弟子ですから。師匠が求める事にいち早く気づき、それに相応しい案を提示する――そう、一番弟子ですから!」

「おう、分かったよ。さっさと話してくれぇ」


 俺は手をひらひらさせながら話を促す。

 すると、ルミナスは近くに置いていた鞄を漁り。

 その中から一枚の紙を取り出した。

 何が書かれているのか、机の脇の魔石の明かりを近づけて……へぇ。


「天下一料理大会……面白そうじゃねぇか」

「……あぁ、これ、俺聞いた事あるっす!」


 レントはそう言って説明する。

 天下一料理大会とは、毎年行われる料理の祭典で。

 王国領地内にある中央大平原にて大々的に行われる。

 運営する人間たちは、貴族や商会の人間たちだと言う。

 大勢の料理人が平原のど真ん中にて店を開き。

 そこに集まって来たお客さんたちからの投票をあの手この手で集めると。

 そうして、最も多くの票を獲得した料理人がその年の――“料理王”となる。


「中々に、そそるじゃねぇかよ」

「……ただ、参加するには推薦状がいるらしいっすよ」

「す、推薦状だぁ? め、面倒くせぇなぁ」

「いやぁ、流石に大きな大会っすからねぇ。そこいらの料理人なんてほいほいと参加させられませんよ……あ、後はぁ参加料だって取られるし……やっぱ、やめときます?」

「えぇぇ!? ダメです!! 師匠のラーメンは天下逸品! 絶対に優勝できます! 出るべきです!!」

「うーん」

 

 レントとルミナスの言葉。

 二つをいっぺんに聞きながら、俺はどうしたものかと悩む。


 出たい気持ちは大いにある。

 大会に出て、世界各国から来るであろうお客さんたちにラーメンを食べてもらいたい。

 そうして、彼らに宣伝してもらい、もっと多くのお客さんたちに店に来てもらいたい。

 そうすれば、俺のラーメンを世界中に広める事が出来る。


 いや、俺じゃねぇ。俺と――おやっさんのラーメンだ。


 夢はでっかく、行動あるのみ。

 だからこそ、絶対に出たいんだがぁ……誰が俺に推薦状を?


 腕を組んで首を捻る。

 すると、ルミナスはどんと自らの胸を叩く。

 

「ご安心を! 私が今から王都へと戻り、この事を国王にお伝えしすぐに師匠の推薦状を」

「――やめろ馬鹿野郎」

「え!? 何故ですか!? まさか、国王の推薦状では不服ですか!? でしたら、騎士団長でもギルドマスターでも」

「――考えろやぁ! 俺の存在を知らしめてんじゃねぇよ!?」

「……?」


 馬鹿は理解していない。

 国王の耳に俺がこの街でラーメン屋を開いているなんて知られれば。

 絶対に、俺に戻って来るように遣いを送って来るだろう。

 下手をすれば、自ら此処へ来ることだって十分に考えられる。

 騎士団長もそうであり、あの婆さんであれば確実に店を潰しにかかるだろう。

 そうなれば一巻の終わりであり……もっといい方法はねぇのか?


 俺は悩む。

 悩んで、悩んで、悩んで……。


「……そういえば、少し前から首から下げてるその指輪……それ?」

「んぁ? あぁこれか? これは、酔っぱらいのおっさんに貰ったもんだ。よく分かんねぇけど、タンスに仕舞ってるっていやぁカンカンに怒りやがってよぉ? だから、態々、見えるところにぶら下げてやってんだよ。はぁ」

「……ちょっと見せてくれないっすか」

「え、あぁ、まぁいいけど……ほらよ」


 俺は紐に括り付けた指輪を渡す。

 すると、レントはそれを月明かりに翳して見ていた。

 色々な角度から見て、ゆっくりと両手で大事そうに持ち……?


「……オウマさん。その人、店の常連っすか?」

「え、あぁ、まぁ屋台限定だけどなぁ。ラーメンを気に入ってるって言ってよぉ。最初の時にそれをくれたんだよ。禄に説明もせず、何れ分かるぅなんて言いやがって」

「――明日、行きましょう」

「「……?」」


 俺とルミナスは首を傾げる。

 レントはたらりと汗を流し――


「とんでもない大物っすよ。上手くいけば、推薦状――貰えるかもしれないっす」

「……マジ?」

「流石、師匠! 既に答えを得ていたとは!」


 レントはくつくと笑い、指輪を返してきた。

 俺はそれを受け取り、あの酔っぱらいがそんな大物だったのかと考えて……いや、ねぇな。


 酒瓶片手に飲み歩くおっさんだ。

 身なりは良くても、まるで大物感が無い。

 だからこそ、頭が激しく混乱する。


 レントは誰かと勘違いしているんじゃないか。

 いや、そもそも、何でレントは知っているのか。


 俺は色々な事を考えながらも。

 指輪を送ってくれたアダムに聞くのが手っ取り早いと考える。


「じゃ、屋台で」

「いえ、会える場所は知ってます。明日は店も休みですし、俺が案内しますよ」

「え、お、おぅ……因みに、どういう系の大物だ?」

「……まぁ本人に聞いた方が良いですよ。俺の口からはとてもとても」


 レントの言葉に渋い顔をする。

 が、それでもレントは首を左右に振る……けちだな。


 俺は酒瓶を持ち、コップに酒を注ぐ。

 が、すぐに空になっちまった。

 俺はため息を零し、コップの残りカスを一気に呷る。


「はぁ……しゃあねぇ。行ってやらぁ。推薦状は必要なんだからなぁ」


 俺はにやりと笑う。

 もしも、本当にアダムが推薦状を書ける人間であれば、その時は――


「靴でも何でも舐めてやらぁ! ひひひ」

「……そんなオウマさん見たくねぇっすよ」

「師匠が舐めるのなら私も舐めます! 一番弟子ですからね! どやぁ!」

「……いや、何で俺を見るんすか?」


 遥か古の技である高速靴舐め。

 大剣豪となって披露する機会は無かったが。

 使う時が来たかもしれない。

 俺はくつくつと笑いながら、大物であるアダムとの交渉に闘志を燃やした。

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