11-3 なんでそんなに弱いの?
『グレッグ・ダース対ローリア・ソムィーズ』
審判の声が響き渡り、客席からは歓声とブーイングが聞こえた。女性が出場することに反対している人もいると聞いていたので予想はしていたが、思ったよりも人数が多そうだ。
ローリアが会場に出ると、向かいから体格のいい男の子が出てきた。強そうだ。
『始め!』
「とりゃーっ!」
ローリアは間髪入れずに魔法を放った。光の玉はグレッグに当たり──相手は倒れた。
「あれっ?」
攻撃を予想して身構えていたのだが、相手は起き上がらない。
『勝者、ローリア・ソムィーズ』
審判が言った。
「えっ?ちょっと待ってよ」
ローリアは大いに戸惑った。
「こんなの初歩魔法じゃない。なんでそんなに弱いの?」
ローリアは純粋に疑問に思ってこう言ったのだが、多くの人には挑発ととらえられてしまい、客席から笑い声とブーイングが同時に起こった。
「ローリアったら。わざと負けろって言ったのに」
客席でアルマがぶつぶつ言っていた。
「男の子に嫉妬されたら厄介よ。嫌がらせしてくるから」
「だからって能力を見せるなと言うの?」
隣の侯爵夫人が鋭い目をした。
「男性の嫉妬を恐れて実力を出さないのはフェアじゃないわね。手加減なんて、相手にも失礼よ」
侯爵夫人が言うと、アルマは不満げに黙った。
『エリック・ダンジュル対カイレル・マーデス』
「うわあ、優勝候補に当たったぞ」
「エリックは運が悪いな」
ローリアが見ていると、カイレル・マーデスは戦闘開始と同時にとんでもない速さで相手に殴りかかり、反撃の隙を与えず連続で攻撃を加え、あっという間に倒してしまった──魔法を使わずに!
「見てるだけで怖いよ」
ローリアの後ろにいた男の子が言った。
「接近戦が得意なのね」
ローリアも恐れを感じながら言った。
「近寄らないようにして攻撃魔法を──」
「無駄だよ。あいつはすごい速さで突っ込んでくるから。今の見てたろ?」
ダン・スゥオーサーが言った。
「当たったら終わりだよ、あいつには」
『デリー・ノーサー対ローリア・ソムィーズ』
次の試合が始まった。
「今度こそ強いのが来るわよね?」
ローリアは期待しながら出ていった。相手は筋肉隆々で、魔力も強そうだった。
『始め』
ローリアと相手が同時に魔法を放った。魔法は空中でぶつかり合ってかき消えた。
「そうこなくっちゃ!」
ローリアはさっきのカイレルの真似をして相手に突っ込んでいき、蹴りを加えた。
デリーはあっさり吹っ飛んでいき、向こう側の壁に当たって仰向けに倒れた。
「えっ?」
ローリアがきょとんとしていると、
『勝者、ローリア・ソムィーズ』
審判か言った。会場からまたブーイングが起きた。
「ちょっと待ってよ!その強そうな見た目は何なのよ!?」
ローリアはまた素朴な疑問を発し、会場からは笑いとブーイングが起きた。
ローリアは自分で気づいていなかったのだが、魔法が効かず、殴られても喜ぶだけの変態、いや、モフモフを相手に訓練をしていたので、全ての攻撃力が上がりすぎて力加減ができなくなっていたのだった。
その後も、ローリアは相手をあっさり倒し続け、気づいたら準決勝まで進んでしまった。
客席では、アルマがまわりの人々の様子を探っていた。女性客はみな面白がってキャッキャと笑っている。しかし、男性客の様子がおかしい。最初は面白がって笑っていたのに、ローリアが勝ち進むにつれて顔が引きつってきた。
だから言ったのに。
アルマは心配になってきた。プライドが高い男たちにとっては、『か弱い女』に自分たちが倒されるなんて、あってはいけないことなのだ。何か嫌がらせをしてこなければいいのだが。
『カイレル・マーデス対ローリア・ソムィーズ』
審判が高らかに言うと、客席からひときわ高い歓声が起きた。
「運が悪いわね」
客席で侯爵夫人が心配していた。
「優勝候補に当たったわ」
ローリアが会場に出ていくと、向かいから、不敵な笑みを浮かべたカイレルが出てきた。ひときわ高い魔力を放ちながら。
ローリアはぐっと両手を握りしめて相手をにらんだ。今度こそ、本当に本気を出さないと勝てない相手だ。




