魔法があった所で
「シオン!無事か!」
少年が前を向いたまましゃべりかけてきた。
盗賊は下卑た笑いをうかべている。
神様も、なにもこんな場面に送らなくても...と思うが今は考えてる場合じゃない。
どう考えても、この少年があの盗賊に勝てるとは思わない。
それは少年も感じているだろう。
「ファイヤーウォール!」
盗賊がそう叫ぶと、周囲の炎がさらに燃え上がり、逃げ道がなくなる。この世界は魔法が使える世界らしい!
「スゲー!魔法だ!」
興奮してつい声が出る!
「ふふ、すごいだろう。オレの魔術はその辺のやつよりもすごいからな。だからこそ、こんなことができたわけで」
盗賊が近付いてくる。
「サンダー!」
少年が必死に叫ぶと、バチチ、と音がして強い静電気程度の電気が盗賊を襲った!
しかし、
「その程度じゃあ効かんな~」
盗賊は余裕の表情だ。
どんどん近付いてくる。
魔法名を言えば魔法を使えるのか!?
こんな状況にもかかわらず、俺はわくわくしていた。
思わず先程の魔法名を口に出す!
「サンダー!!」
ドオオオン!!!
同時に、直径1メートルはある雷が、盗賊を直撃した。
盗賊は、けほっと煙を吐き出すと、ばたりとその場に倒れていった。
使えた!魔法が使えた!!
「なっ...シオン、いつの間に魔法を使えるようになったんだ!?しかもこんな...」
少年が驚いている、以前のこの子は魔法が使えなかったらしい。
そういえば俺は名前も知らないな。
「お兄ちゃん...私...どうしてたんだっけ...」
思い切りしらを切ってみた。
「!?そうか、さっきあいつに殴られたから、記憶が混乱してるんだな、かわいそうに...」
「そうなの、なにも覚えてなくて...お兄ちゃんの名前って、なんだったっけ...?」
「!!!???」
少年はさっきよりも驚いた顔をして、
「忘れたのか!?お兄ちゃんの、お兄ちゃん名前を...!?」
相当ショックだったらしい...シスコンか。
「お兄ちゃんの名前は、ユーリ。ユーリだよ、二度と忘れないでね!!!」
肩をつかまれてがくがく揺すられた。ちょ、痛い、痛いって。
「それよりも、あいつ、どうしよう?」
雷の直撃を受けて倒れている盗賊を見る。
当分起きないと思うが、まだ死んでいないので安心はできない。
「そうだな、とりあえず縛っておくとしようか。」
いつの間にか炎は消えて、周囲がよく見えるようになってきた。
ここは元は森に囲まれた村だったようだ。




