083_妹とブラクラ
今日は良く晴れた日の午後、なーんの予定も入っていない。そんな平和な昼下がり……
「お兄ちゃん! 助けてください!」
はい平穏な午後終了。マンガだと即落ちって言われるくらいの鮮やかな流れで入ってきたな。
「どうしたんだよ、今度はまた何か十八禁の話題をこの世界に持ち込もうってのか? 危ないからやめろって言っただろう」
「違いますよ! 明日授業で使うPCが緊急事態なんです! 助けてください!」
あー……なんとなく何があったか察したな。エーミールならここで君はそんなヤツなんだなって言ってるところだ。
「はいはい、今行くよ」
飲みかけのコーヒーを置いて緊急事態だという妹の部屋に入ってPCを見た。まあ、案の定予想の範囲内の画面が映っていた。
画面中に大きく進入禁止の標識のようなマークが表示され、『ウイルスに感染しました!』と目に優しくない色ででかでかと点滅している。まるで古のBlinkタグが復活したWEBサイトのような有様だ。
しかもご丁寧に『ウイルスニカンセンシマシタ』と片言の日本語で警告を出している。日本語で警告を出して拙い日本語で主張してくるマルウェアは可愛くさえ思えてくるほどだ。
「これが出ちゃって大変なんですよ! なんとかなりませんか?」
俺はそっと無駄と分かっていることを尋ねた。
「何をやっててこれが出たんだ?」
阿地はプイッとそっぽを向いた。まあ要するに兄に言えないサイトを見ていて不用心にリンクを踏んだのだろう。ネットは海千山千だと言って聞かせた覚えがあるんだがな。
「とりあえずっと」
Ctrl-Alt-Deleteで画面を切り替えサインアウトを選択してアプリを一通り落とす。そのまま阿地にパスワードを入れろと言ってそのままサインインしたら綺麗に怪しげなウインドウは消えていたので、一応ブラウザのキャッシュもクリアしてこれで終了だ。
「これで多分大丈夫だろ。細かいことは言わないけど、俺に言えないようなものを無理してみようとしない方が良いぞ? ネット上なんて逃げるにしかずなんだからな」
「むぅ……お兄ちゃんは私のことを信頼していませんね?」
「あんなスクリプト踏んでる時点で怪しげなものを開いたんだって分かるよ。治安悪めのところに行くんじゃないぞ」
これにてひとまず妹のPC問題は解決と言ったところだろうか。ああ、そうだ、一つ忠告しておこう。
「阿地、ダウンロードって画像はダウンロードボタンじゃないからな、そのくらいは注意を払えよ」
矛盾したような言葉だが、現代ネットの殺伐とした風景を言い表していると思う。コイツが何をしようとしたのかは分からないが人間単純なトリックの方が引っかかるもんだ。注意をしておくにこしたことはない。
「じゃあお兄ちゃん、いい感じに妹モノが見たり読んだり出来るサイトはないんですか?」
そんなことを聞いてきたので、妹モノという部分には目を瞑って、大手イラスト投稿サイトを教えておいた。一応あそこなら年齢認証があるので危ないものは踏まないだろう。
そうして俺はそっとそこを離れた。キッチンに行くともうコーヒーはすっかり冷めていたので、一気に飲み干して今度こそ穏やかな時間を楽しんだ。




