082_妹と俺は、確かにここに居る
「お兄ちゃん、退屈ですし話を止めてお楽しみをしませんか?」
「話って何の事だろうな、俺にはさっぱり心当たりが無いなあ」
「まーたしらばっくれて、お兄ちゃんだって書かれていなければ道都だって出来ることくらいご存じでしょうに」
そういう話はやめてくんないかなあ……
「はいはい、分かったよ、そうかそうか、俺の妹はそんなヤツだったな」
「誰が蛾の標本を壊した少年だと言いたいんですか?」
「切れ気味に言うなよ……お前だって観測している人が居る前提で話すなっての。そういうのは黙っておくのが美徳だろうに、『沈黙は金』だと学校で習わなかったのか?」
「古い話ですね、忘れてしまいました」
「中学生がもうすでに記憶が怪しいなら何も覚えられないんじゃないか?」
「お兄ちゃんはもっと空気を読んでください、そういう話じゃないでしょう」
「『くうき』」
「だれが文字そのままの空気を読めと言いましたか! 私たちは音声で会話をしているんだから文字の空気を読んでどうするんです!? お兄ちゃんだって大概メタいですよ!?」
ふぅ、ようやく話を誤魔化せたな。好き放題展開させようとしやがって。俺にだって出来ることとで気ないことがあるんだよ。本音はなんであれ、俺はそうであらなければならないんだよ。
「はいはい、俺も事情があるんだよ。お察ししろ。そもそもただでさえ締め付けの厳しい社会なんだからこれ以上進んだらいけないラインってものがあるんだよ」
「見えないんだからタチの悪いラインですよねえ……」
確かに見えるわけじゃないが割とハッキリ常識的な感覚がラインになっていると思うのだが、我が妹にはそんなこと知ったこっちゃないらしい。まあ、ここがもし異世界だったらとか、ご都合敵な考えも実現すると良いなとか思ったりはするが。
「諦めろ、俺たちは日本に生きてるんだよ。その範囲でしていいこととダメなことがある」
「逆に考えてください、日本を舞台にしたファンタジーの可能性も公言されていないだけで否定はされていないんです」
「お前は本当にその主張が通ると思ってんのか……」
「私、チキンレースは好きなんですよ」
チキンレースと分かってやろうとする阿地に呆れを隠せない。自分が好き放題出来ればそれでいいとでも言いたいのか。
「お兄ちゃん、良いじゃないですか、細かいことを気にしたら負けです。深く考えず許される範囲で行動しましょうよ」
「そうかも……」
「でしょう?」
「そんなことに乗るとでも思ったか? 俺は常識人なのでそんなことを思い悩みたくないんだよ。俺はストッパーとして倫理の守護者をやるからな」
「ちぇ……しかたないですね、それじゃ今日の夜は私とお兄ちゃんは二人とも自分の部屋で過ごしました、ちゃんちゃん」
「開き直るなよ……分かった分かった。聞ける範囲でお願いは聞いてやるからな?」
「それは物理的にですか? 倫理的にですか?」
「両方に決まってんだろ。そのくらいは分かれっての」
こうしてくだらない一日は終わった。当然ながら妹は自分の部屋でぐっすりと寝ている。いや、そんなこと書かなくても分かると思うけど一応な、誤解なきように思っていただきたい。そうして一日は終わった。




