080_妹とハッキリしていること、していないこと
「お兄ちゃん、眠いです……」
「そうか、寝てこい」
眠そうに目を擦りながらスマホを弄っていた阿地にそう言うと何故か声音を荒らげてきた。
「違うでしょ! そこは『一緒に寝るか?』とかいい感じに言うところでしょう? そりゃあ私は一人で眠れますけど、そこには目を瞑って一緒に寝るか聞く場面でしょうが」
「それはどう考えても違うと思うが……」
その言葉から流れるようにその返答が出てくるのは下心が丸出しじゃないっすかね……コイツは眠いと言ったときにその返答が来たら喜ぶんだろうか? 兄として心配になるレベルなんだよなあ。
「お兄ちゃんは妹の心が読めていませんね、もっと読心術の勉強をしてください」
「流れるように人の心を読めとか言われても困るんだが……」
「誰も人の心を読めなんて言ってませんよ、妹の心だけ読めれば良いんです!」
「無理に決まってんだろ……どこぞのアニメの超能力者かよ」
人の心が読める分けねーだろ。小学校で作者の気持ちを考えろって問題で真面目に考えて教師に切れられたのはだてじゃねーぞ。
まあ……この妹の心を読んだら脳内ピンク色でこちらの脳が侵食されるんじゃないかって恐怖も多少はあるがな。
「思ってるだけで気持ちが伝わると思うなよ、世の中の大半、と言うか全員は言わなきゃわかんねーんだよ」
「そうかもしれませんけど……お兄ちゃんだけには期待をしたっていいじゃないですか! 私のことを私のお兄ちゃんが分かってくれればなんて思うのがいけませんか」
んな感情論を言われてもなあ……どうしろってんだよ……何もかもが出来るわけねーだろ。とはいえ、妹の期待に応えられる兄でありたいとは思うよなあ……そのくらいのことが出来ればどんなに良いだろうか。出来ないからこそ悔しいんだがな。
「分かったよ、空気が読める程度に離れるように頑張る。だから無茶振りはやめてくれ」
何気ない言葉からのエスパーは出来ないが、妹の望むものを推察できる程度は多少頑張ってみるかな……出来ないもんは出来ないけどさ……
「そうですか、とりあえず私の心が読めるように一緒の布団で寝ましょうか」
「しれっと要求を変えるな。人の気持ちを慮るのと言いなりにするのは別のことだぞ」
「むぅ……今、少しだけお兄ちゃんがデレたような気がしたので勢いでいけるかと思ったんですが……」
「勢いで主張を通そうとするんじゃないよ、理論を考えろ」
「理論ですか……兄は妹の思いを推察して汲み取るべきであるって話ですか?」
「それは理論じゃなくて思想だな。その辺の区別を付けないと苦労するぞ」
「お兄ちゃんに私の気持ちを推察してもらうのはダメなんですか、妹に甘くなってほしいんですけどね……」
妹だからって全てが許されると思うなよ……
「よし! ではこれにて話し合いはやめましょう!」
「分かってくれたか」
良かった、妹が理解をしてくれた……
「ということでここから先は明日の朝まで時間を飛ばしましょう! 観測できない範囲で一線を越えていようが描写がなければ分かりませんからね!」
こうしてこの日は強制終了された。何がこの後にあったかは全て闇に葬られたのだった……




