074_妹は戦いに飢えている
「お兄ちゃん、今日のお昼は私が奢ります!」
「どうしたんだ突然?」
妹からの突然の提案に驚く。コイツってそんなヤツだっけ?
「お兄ちゃんはファミレスで喜ぶ彼女というモノをご存じですか?」
「ああ、そこそこ前にネットミームになったアレね……」
なんだか凄く炎上しそうな気がするんだがな……そのきな臭い気配は消せるもんじゃないぞ。
「ここは面白そうなのでお兄ちゃんにファミレスを奢って『ファミレスで喜ぶ彼』を撮影してSNSにアップロードしたら面白いかなって思いまして」
「全力で煽るなあお前!?」
ただでさえ燃えやすい話題に火力用の燃料を提供していくスタイル、好きじゃないし嫌いだ。
「まあまあ、いい感じにネタとしてバズったら良いじゃないですか。楽しそうな実験でしょう? 世の中には炎上大好きな連中もいるんですよ」
どう考えてもまともとは思えない。人選が俺で本当によかったと思う。他所様に炎上の燃料を提供されても困るしな。
「分かったよ、そのくだらない茶番にのってやるから、人には迷惑をかけるなよ?」
「大丈夫です、敵に回すと百年文句を言い続けそうな連中には見つかりませんよ」
偏見のような気もするが燃えないならそれでいいかな。くだらない提案だけど、ここで下手をすればもっと燃えそうな気もするのでこの辺で納めておくのも悪くない。
「じゃあ行ってきましょう!」
――一時間後
「うーん、これはいい感じに煽れてますねえ……」
「楽しそうにするんじゃない、基本炎上なんてしない方が良いんだからな」
食事中に阿地が俺の顔より下をテーブルと一緒にスマホで撮ってアップロードした。その十分後くらいから途切れないようにスマホの通知音が鳴っている。通知を切ればいいのにとは思うのだが、楽しそうにしている阿地を見る限り通知は愉悦を覚えるモノらしい。
「くくく……面白いですねえ、有象無象が必死に抗ってくる様は面白いものです。常勝無敗のレスバ魔に勝てるわけがないでしょうに」
「その称号って誇りに思ってないか?どう考えても普通に悪口にしか思えないぞ」
「悪名は無名にに勝るんですよ。ブロックもミュートも晒し上げも私にかかれば適切なタイミングで使えるんです」
「言ってることはロボットの天才パイロットみたいだけど内容が最悪すぎやしませんかね?」
「私は負けるのを恥だと思ってますから。レスバであっても勝っているのを認められるのが好きなんですよ」
妹の価値観とはわかり合えないなと思ったところで、今レスバになっている時点でネットのわかり合えない無数の連中と戦っているのだと思い至って結構な性格してんなあと本心から思ったのだった。
なお、翌日楽しそうな顔をして目の下に隈を付けていた。妹とレスバだけはしたくないなと思った一件だった。




