070_妹は兄のことを知っている
俺は夕食を作るべくレトルト食品をレンジに入れていた。下手に凝ったものを作ろうとするから美味しくなくなるんだ。自分の腕を理解して文明の利器に頼った方が良い。そう結論づけて今は温野菜と肉のセットをレンジに入れている、これが今日のメインのおかずだ。
「お兄ちゃん、レンジの前でじっと見ているところ悪いんですが私が作りましょうか?」
「いや、俺が作るから心配しなくていいぞ」
「作ってるのはお兄ちゃんじゃなくてレンジじゃないかと思いますよ」
そんなことを言う妹を気にせずじっくりとレンジで温まるのを待っていると、ブザーが鳴ったのでレンジから取り出してポン酢をかけた。これで美味しい料理の完成だ、俺は自分の腕より調味料の会社を信じている。なんでも自分で作るより出来合の品を使った方が確実だ。
そうして完成したおかずと、ご飯にふりかけをかけたもので夕食の完成となった。
それをテーブルに並べて二人で食事となった。
「お兄ちゃん、作ってくれるのはありがたいですけど、面倒なら店屋物を取っても問題無いんですよ?」
「お金がかかるだろ、この夕食なんてもやしメインだから安いんだぞ」
「食費をそこまで削ると悲しくなるので私が作るときは豪華なものにしますね」
そうして食事を進めていった。美味しく食べ、食べ終わったらお茶を飲みながら妹と談笑をした。そんな平和な時間を過ごせるのは非常に心地良い。
「しかしお兄ちゃん、どうしてそんなに食費をケチるんですか?」
「い……いや、別に理由なんて……ほら、お金はあった方がいいし……」
「そう言えば全く関係無い話ですが、某スマホの新型が発表されましたね、全く関係無い話ですが」
「ごめんなさい」
痛いところをついてきやがって。どうしてそんな情報には詳しいんだよ……たしかに食費から少し購入に回そうと思ってたけどさあ……普通気が付かないと思うじゃん?
「お兄ちゃんは私のリサーチ力を甘く見てますねえ、妹をなめないでほしいです、何年お兄ちゃんの妹をやっていると思ってるんですか」
「そこまで兄に興味を持つもんかねえ……まあいいけど」
「ちなみにお兄ちゃん、スマホを新しくしたら連絡用アカウントが変わったらそれを全部教えてくださいね、連絡が取れないと困るので」
「明らかに連絡用以外のアカウントも教えろって言ってるだろ。SNSのアカウントから急ぎの連絡を取る気かよ……」
俺はなかなか呆れつつそう言うのだが、阿地の方はそれがどうしたという顔をしている。曰く「兄のことを全部知っておくのは妹の義務だから」だそうだ。そんな義務があったなんて初耳だなあ……
その晩のことだ、俺はこっそり電気を消して輝度を下げたPCの前で悩んでいた。新しいスマホを買うか? その非常に大きな問題を考えていた。結局、それを先送りにして結論は伸ばすことにした。妹がどこまで気が付くかは分からないが、ネットを検閲されないにしても、物理的に宅配が必要な異常バレるのが明らかなのでもう少し妹が忘れてくれるまで待つことにした。




