065_妹とのちょっとした議論
その日は退屈をしていた、いや、別にわるい事じゃない、暇なのは平和だと言うことでいいことだ。そう思いながら朝食のトーストを食べながらスマホで動画を流していた。
「お兄ちゃん、お行儀がわるいですよ」
妹はそう言ってくるが今更だ、昔っからお行儀なんてもの気にしてないのは知ってるだろう?
「家の中で好きに料理を食べて何が悪い。ちゃんと阿地が作った料理はマナーを守って食べてるだろうが」
妹が作ってくれたものをいい加減に食べたりはしない。そちらにはきちんと料理と向き合っているのだから良いじゃないか。
「開き直りますねえ……外でそんなことしたら炎上しますよ?」
「分かってるよ、安心しろ、他所でやるほど空気が読めないわけじゃない」
家の中、プライベートくらい自由に飯を食べさせてくれてもいいじゃないか。窮屈なレストランとは違うのにそんなにこだわらなくてもいいだろうに。
とはいえ、阿地の言うことも分かんなくはない。常日頃からマナーを良くしていないといざというときに困るって事だろう。
「ほら、お兄ちゃん、ジャムが付いてますよ」
そう言ってハンカチで俺の口の近くを拭う阿地。流石に少しお行儀がわるすぎただろうか?
「ありがと、どうも家だとだらけてよくないなあ……」
そう言うと妹がクスクスと笑った。
「ってことは、今みたいなお兄ちゃんが見れるのは私だけってことですか? それはまあ、わるくないですね」
そう言うものなんだろうか? 妹の考えは兄に理解できないのかもしれない。阿地は少々物好きが過ぎるので俺に構い続けるのも心配になるんだがな。
トーストを食べ終わると砂糖たっぷりのコーヒーを飲んで一息ついた。甘味で目が覚めるような気分になる。朝食としては結構なものだ。
「お兄ちゃん、ついでに言っておくとバター使い過ぎですよ、一欠片ずつ切ってあるのに三個も四個も使わないでください」
「バレたか……」
食パンにたっぷりと冷蔵庫から出したバターを塗って食べていたのがバレてしまった。美味しいんだから仕方ないと言いたいが、まあ体に良くはないのかもな。
「まったくもう、お兄ちゃんは贅沢が過ぎます。冷蔵庫にたくさん要求するくらいなら、私にももっとたくさんお願いをしてくださいよ。お兄ちゃんのお願いだったら大体何でも聞きますよ?」
「対価が怖いから気持ちだけ貰って遠慮しておくよ。電気代だけですむ冷蔵庫と後から何を要求されるか分からない妹は違うだろ」
「私は無茶なんて言いませんけどね。大胆に行ってもお兄ちゃんにキスをお願いするくらいで十八禁なお願いはしないんですからおとなしいものでしょう?」
「感覚バグってないか? 一体何をしたらそんなことになるんだよ」
やはり妹は頼りになるが、安易に頼るもんじゃないななんて思わずにはいられなかった。




