064_妹は夢の中で何を見たのか?
今日は朝食の当番だったので朝早くからキッチンに向かった。そこまでは良かった。ただ、リビングダイニングにはソファが置いてあるのだが、その上でだらしない格好で妹の阿地が寝ていた。
それは良いんだけど、見えそうで見えない微妙な格好なので目のやり場に困る。少し考えてから脱衣所に行って大きめのタオルケットを持ってきて阿地に掛けておいた。
暑いと言うこともないが、布団は何か違う気もするし、このはだけた状態では目のやり場に困る、ひとまず隠しておこうということでちょうどいい布を用意した結果だ。
「ん、お兄ちゃん……しゅきぃ」
何やら寝言のようなことを言っているので無視することにした。いや、好きと言われるのはわるくない。ただ、その内容が少々アレなので黙っておく方がいいのではないかと思う。
朝食のご飯と漬物を用意しながら考える。阿地はどこまで本気なんだろうか? いや、それを考えるまでもないのかもしれない。ただ、その答えを口にするのは違うような気がする。
言わない美徳というのも世の中にはるんじゃないだろうか。何でもかんでも口に出していたら人間関係が上手くいかないだろう。そう考えるとこのくらいの距離感でいいかな。
ご飯をよそってふりかけをかける。手抜きと言われそうだが、朝からそんなに豪勢な料理を作っても仕方ない。程々で良いんじゃないかな、朝一でデカいステーキを食べると万全の状態で食べるほど気分がよくない。
「阿地、朝ご飯できたぞ」
肩に触れて体を強請るとバネがはじけるように飛び起きた。起こすのに苦労しなくて助かるよ。
「お兄ちゃん! 私ここで寝てましたか!?」
「あ、あぁ、確かにここで寝てたぞ」
何かビックリしているのでどうしたのか聞いてみたが『寝言とか聞きました?』というので、紳士らしく『聞いてないよ』と答えておいた。
「そうですか、良かった……」
阿地がどんな夢か何かを見ていたのかは聞かないことにした。夢なんて言う自分でコントロールできないことを理由に弄るのは感心しない。内心の自由の範囲内じゃないかと思う。
「朝ご飯にするぞ、ほら、起きて食べろ」
阿地は喜んで席に着いたので二人でのんびりご飯を食べた。多分阿地の夢は人に言いたくないことなのだろう、それはそれで良いんじゃないかと思っている。
「美味しいですね! お兄ちゃんの作った料理は美味しいです!」
ふりかけご飯でそこまで喜んでくれる妹に苦笑しながら、美味しく食べてくれるなら何よりだと思った。ただ、それから数日はソファでぼんやりしている妹の姿を見なかった。あくびがでるとすぐに自室に帰っていったので、いったいあの時どんな夢を見ていたのだろうかとほんの少しだけ気になった。




