062_妹の贈り物
「お兄ちゃんにプレゼントがあるので受け取って貰えますか?」
妹の突然の申し出に思わず頷いてしまった。いきなりすぎるとまともに考えるような暇はない。
しかしプレゼントねえ、何かあっただろうか考えるのだが何も出てこない。理由が思いつかないのは少し怖い気がしなくもない。
「お兄ちゃん、それではこれをどうぞ」
そう言って差し出されたのは一つのチョコだった。ラッピングもされておらず、簡素な缶に入っているものだった。
「レア物なのでゆっくり味わって食べてくださいね?」
バレンタインでもないのに何を突然言っているんだろう? そんな疑問は湧いたものの、『ありがとう』と言って受け取った。
「今日って何かあった日だっけ?」
阿地にそう問いかけると、『何かないとプレゼントしちゃダメなんですか?』と正論を言われたので何も言い返せなかった。
受け取ると、『それじゃ私は寝ますね』と言って部屋に帰っていった。現在正午、とても中学生の寝る時間では無い。
何かあるのだろうかと思ったのだが、渡されたチョコにはしっかりとシュリンクがしてある。細工をした様子はない。ただの阿地の気まぐれなんだろうと割り切って部屋に帰った。
そうしてコーヒーを一杯用意して妹から貰ったコーヒーを食べることにした。コーヒーを淹れたので、ほどよい温度になるまで待っていたのだが、その時にふとポケットにスマホが入っていることに気が付いた。
そう言えば世の中には画像検索なるものが遭ったことを思いだした、思いだしてしまった。上からチョコの缶を撮影し、検索エンジンで画像検索にかけた。すると思いのほかあっさりとチョコの正体が分かった。
平たく言えば精力剤だった。いや、薬機法に違反しているわけではないらしい。ただ、レビューにはそういった用途で使ったというものが散見される。どこまでが販促目的の広告なのかは不明だが、そういった使い道がメインのようだ。
俺はチョコを前にひとしきり考えた。それからコーヒーを一口飲んでから、もう一度検索をしてみたが、目の前のものが薬機法に違反しているという表記は一切無かった。
なら食べても大丈夫かと、一粒食べて口の中で溶かしていく。用途はともかく美味しいものだった。それからコーヒーを飲んで口の中を洗い流し手を繰り返していくと非常に美味しくチョコをいただくことが出来た。
さて、一缶丸々平らげてから、美味いチョコだったと満足した。
結局チョコを食べた後感想を阿地に求められたので『美味しかったよ』と答えると、顔を赤くして『何かなかったですか?』と聞いてくるので『美味しいチョコだったかな』と答えておいた。
法律で禁止されていないものなど害は無いのだろうが効果もないのだ。ただ、変な知恵を付けないようにその事は結局ウチの妹には黙っておくことにしたのだった。




