061_妹と友人の思い出
「お兄ちゃん、コーヒーを淹れてくれますか……砂糖たっぷりで」
「分かったよ、その様子だと徹夜でもしたのか?」
俺の問いかけにキッチンの机に伏せている阿地は『はい……』と力なさげに頷いた。今日は本当に体力が尽きたのだろうか? 完全に体力が切れているように見える。
インスタントコーヒーを多めに入れてお湯を注ぎ、角砂糖を数個入れて妹の前に置く。すぐに顔を上げて、まだ熱いはずのコーヒーを、ためらいも無くゴクゴクと飲んだ。そしてマグカップを机に叩きつけて顔を上げた。
「ちょっとスッキリしました……はぁ、ネトゲも程々にしないといけませんね」
「何やってたんだ?」
ネトゲってFPSかな? ハマるのは分かんなくもないが、楽しいのかなとは疑問に思う。ネトゲだって一試合の時間がそこまで長くはならないだろう。一体なんのゲームをやってたんだ?
「久しぶりにドラゴンファンタジーオンラインを起動したんですが、帰ってきたプレイヤーに
ボーナスが出るみたいなんで貰ったんですけど、経験値ブーストのアイテムだったんですよ。余すこと無く使いたいでしょう?」
「ゲーマーとしては理解できなくもないな」
要するにカムバックボーナスだろう。貰えるなら使い切るまではプレイしたくなっても仕方ないな。
「でしょう! そこで私は過去の仲間に頼ってパワーレベリングをしたんです。そしたらみんな強くなってて徹夜コースですよ」
「廃人仲間が居たのかよ……」
「いいじゃないですか、その子にも夢中になれるものがあったんですよ。おかげで頼りに頼って余裕でかなり経験値を稼げました」
なる程なあ……そりゃ十分強いんだろうが、昔の仲間なら十分連携も出来るだろう。それにしても強かったんだろうな。
俺は少し考えてから、ミルクを一杯カップに入れてレンジにかけた。音が鳴ると言い感じに温まったミルクを阿地の前に置いた。今の妹に必要なのはコーヒーじゃなくこちらだろう。
「まあなんだ、コレ飲んで寝ろ。眠気覚ましに一番良いのは諦めて寝ちゃうことだぞ」
「うぅ……頭が痛い、いただきます……」
阿地はミルクをゴクゴク飲んでとろんとした目で部屋まで歩いていった。ひとまずはこれで寝て貰えるだろう。無茶をしないでほしいなと思えてしまうんだよ。
俺は久しぶりに一人でコーヒーを飲みつつ考えた。あのゲーム、まだ続いてたんだな……ソシャゲの寿命を考えるとなかなかのご長寿ゲームになるんじゃないか?
スマホを取り出し、そのゲームを調べると、トップに出てきたのは今月でサ終するという報告だった。サ終前にグランドフィナーレのイベントがあるということで、消費アイテムを使い切るようなイベントらしい。
阿地に俺以外にも知り合いがいたらしくて一安心しながら、自分のコーヒーを飲んだ。そう言えばコーヒーを飲み始めた理由がネトゲだったなとふと思いだした。どうも兄妹というのは血を争えないらしい。
変な共通点があることに苦笑しながら俺は久しぶりの一人きりの朝食を食べた。




