060_妹とくだらない仮定の話
「お兄ちゃん、私は常々思うのですよ! 何故兄妹で結婚してはならないのかと!」
「演説風にかっこつけて言ってるが内容がものすごくどうでもいいな」
まーた思いついたことを口にしてる。ウチの妹の悪い癖だよ。しかし、堂々とした態度から発言の内容が小物過ぎる。言うだけタダを実体化したようなヤツだな。
「お兄ちゃんは甘いんですよ! 私とお兄ちゃんの愛情が認められないのは許されませんよ!」
「はいはい、妹として愛してるぞ」
「男女としては?」
「ノーコメント」
どう言っても問題になるだろうが……よく言えるよなあと呆れざるをえない。
「お兄ちゃんは何にビビっているんですか? 私とお兄ちゃんの間で邪魔をする人なんて居ないんですよ! 法律が許さないとしてもラストで遠い未来に認められる可能性を信じて生きていくことだって私たちには出来るんです!」
「勝手にラストの後の展開を妄想するな」
「安心してください、人は明示されていないところは想像することしか出来ませんから。実際どうであるかはともかく、九割九分確定していても百パーセントでなければ問題無いんです!」
「どこぞのゲームみたいな確率論を自信満々に語るな。世の中五割の行動だってどっちにころぶか安心できないもんだぞ」
百かゼロかみたいな考えはお進めしないんだがなあ……自由すぎやしませんかね、阿地さんや……
「可能性があるものだったらそれにかけることだって出来るんですよ! つまりは私たちの会話の裏側で世界政府が兄妹での結婚を可能にするように勧めている可能性だってあるんです!」
「わー、すっげえ小物っぽい連中が集まってそうだなその世界政府」
そんなどうでもいいことを進める世界政府とかあったら嫌すぎるだろ。どんなやつがトップに立ったらそんなことを真剣に進める組織が出来るんだよ。
「まあまあ、お兄ちゃんと私が結婚できれば後のことは大抵どうでもいいんです。なんなら世界が滅んでもセーフだと思ってますから、セカイ系ですよセカイ系」
「セカイ系が好きな人にブチ切れられそうな発言はやめろ、その手のことはスゲー考察してる人が居るようなジャンルだぞ」
爆弾発言をサラッとするんじゃあないよ、危ねーだろうと考えろ。コイツ下手にネットにアクセスすると燃えるタイプだよな、ほのおタイプじゃなくて炎上タイプ、危ないから気をつけてほしいよ。
「お兄ちゃんはもっと私に気をつかってくださいよ、世界の大半は私とお兄ちゃんのラブストーリーを求めているんですよ!」
「それは需要の捏造なんじゃ無いかなあ、あんまり褒められた事じゃないと思うぞ」
「甘いですね、私は物語に求めるものはただ一つ、お兄ちゃんだけなんです。妹が嫌いな人なんてそんなにたくさんいるはずがないでしょう?」
「実際に妹が居る人に聞いたことある?」
「訊かなくても分かりますよ、私は賢い妹なので読心術並の観察力があるんですよ」
「分かった分かった、それでいいからこの話はこれくらいにしておこう、陰謀論は扱うと本気にする人が出るからな。世の中に妹との結婚を勧める世界政府があると信じる人が居ても困る」
そう言って俺は話を打ち切った。あくまでも妹の妄想の産物を信じられても困るからな。その日は平和に時間が過ぎていったのだが、世の中には話が通じない相手がいるんだなと改めて思う日だった。




