059_妹と処理作業
部屋を出ると突然妹が抱きついてきた。意味が分からんが本当に唐突だった。俺に抱きついて部屋の中へ押し返そうとしてくる。小さな体のどこからそんな底力があるんだろうかと思うほどの力で部屋の中へ押し込まれて、そのまま押し倒されるかと思ったら、突き飛ばされて部屋のドアを閉められた。
阿地は部屋の外から何やら音を立てていたのだが、それもすぐに止んで部屋から足音が離れていった。何があったんだと思いながらドアを開けようとするとピリッと言う音がしたのだが、少しも動かない。力を入れると音が立つだけなので、どうやら外からテープか何かで貼り付けられているらしい。
どうしてそんなことをしているのかは分からないが、酷いことをするなあと思ってしまう。妹は過激な事をするが、それにしてもおかしい、普段のアイツなら自分も部屋の中に入ってきて逃げ道を塞ぐはずだ。俺の知っている阿地なら間違いなくそうした。
怪訝に思いつつ、ずっと幽閉されるわけではないだろうと思うのだが、落ち着かない気分のまま部屋で過ごしていた。
部屋の外からバタバタと音がしていたのだが、音が止んだかと思うと、なんだか刺激臭が漂ってきた。我慢できないわけではないが不快な臭いだ。
それをしばらく嗅がされた後、再び部屋の前で音がして、ビリリと何かを破る音がして、一通りその音がした後ドアが開いて阿地が飛び込んできた。
「お兄ちゃん! 私はやりました! やりましたよ!」
「今日は意味が分からないにもほどがあるんだが何をやったんだよ?」
「お兄ちゃん、いいですか? 無闇に愛想を振りまいて個人情報を漏らすのは褒められたことではありませんよ。今回は私が何とかしましたが、自分でしっかり自分のことを管理してくださいよ、お願いですからね?」
そう言ってようやく部屋の外に出る許しが出た。部屋を出ると刺激臭は減っていたものの、何か薬品が使われたような臭いがまだしていた。なんだろうと思っていたが、多分阿地に訊いても教えてくれないだろう。害は無いと信じて朝食を食べようとキッチンに行ったときのことだ。
テーブルの上に色鮮やかな封筒が置かれている。そこには俺の名前が書かれているのでどうやら俺に宛てた手紙か何かなのだろう。手に取ってみると封が開けられており、中身はどこにも見当たらなかった。困惑していると突然横からその封筒がもぎ取られ、すぐにシンクに持っていった阿地はそれをガラスコップの中に入れ、マドラーでかき混ぜていた。
途端に臭いがして、コップの中の髪は真っ黒に変色していった。どうやら刺激臭の原因はアレらしい。
「なあ、それなんなんだ?」
「気にしないでください、ただの液体です。危ない危ない、中身を処分したからって油断してましたよ。ま、お兄ちゃんが気にすることではないです」
無言の圧を感じてその事はそれ以上追求しなかったが、なんとも言えない気分になった。あの手紙の中身は一切不明だし、何か根拠があるわけでもないが、封筒からして呪いのようなものではないと思う。
ただ、何かできれいさっぱり処分されたその手紙の内容を知るすべは失われた。アレは一体なんだったのだろうか? なんとなく阿地の反応から予想が付かなくもなかったが、それを忘れてしまうには余りにもったいないので黙っておくことにした。




