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妹がラインを超えようと必死な件  作者: にとろ


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056_妹との勉強会

 さあ寝るかという時間、部屋のドアがノックされた。控えめにコンコンと叩かれて、『入っていいですか?』と妙にしおらしい声だったので思わずドアを開けてしまった。


「お兄ちゃん、その……学校の宿題が終わらないので助けてくれませんか?」


 俺はそれを二つ返事で了承した。阿地がいつもお願いしてくる滅茶苦茶なことに比べれば至極真っ当なことだと思う。


 そうして二人での勉強会が始まった。


「お兄ちゃん、ここはどうやって解くんですか?」


「三平方の定理を使え」


「じゃあここは……」


「読めば分かる問題だろ、ここからここまでを抜き出せばいい」


「なるほど、ではここはどうやって解きましょう?」


「あー……ここは微分使えば簡単なんだが……素直に計算しとけ」


 とまあ、結構な数の質問をされたので一つ一つ答えていったのだが、なんだかおかしいと思ってきた。


「お兄ちゃん! ここはどうやりましょう?」


「なあ……いくら何でもマイナスの数を知らないわけ無いよな? 本当に分かってなかったら受験が危ういレベルだぞ?」


 徐々に全部の問題を俺に質問してくるようになった。邪推かもしれないが、全部の問題が分からないはずないだろうと思う。


「まあ……分かるんですが、お兄ちゃんと協力して宿題を片付けるって経験が大事なんじゃないですか! ほら、UXユーザーエクスペリエンスって言葉もあるでしょう?」


「どう考えても勉強がしたいわけじゃないよなあ! 珍しくまともなお願いをしてきたなと思ったらそんな理由かよ! いつもと変わんねーじゃんか!」


「細かいことですよ、お兄ちゃんが私にいろいろと教えてくれるっていうシチュがいいんじゃないですか! お兄ちゃんに教えてもらった知識はぜったに忘れませんから!」


 なんだか言いように舌先三寸で丸め込まれているような気はするが、阿地を相手に口喧嘩なんてしよう者なら絶対に勝てるはずがないので仕方ない。


 そうしてその晩はみっちりと阿地の質問攻めに遭うことになる。実際のところ阿地はそこまで成績が悪くないし、「なんならお兄ちゃんを一生養うのもやぶさかではないです!」なんてことを言っていたのだから頼りになる妹だ。だから俺を頼るのは違うだろうと思ったのだが口にはしなかった。


 ただ、それから少しして、学校にて抜き打ちの小テストがあったそうなのだが、阿地は見事に満点を取っていた。それを俺に自慢気に見せながら『お兄ちゃんのおかげですよ! 誇らしく思っていいんですよ!』とドヤ顔をしていた。実際に満点を取っているのだから俺の苦労も無駄ではなかったのだと思いたいものだ。

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