055_妹の予想外の買物
その日の夕焼けは綺麗なもので、心が洗われるようだった。きっと世の中は綺麗なもので、生まれながらの悪人などいないのだろう……
「お兄ちゃん! ほらほら、こんなのどうですか? そそりませんか?」
現実からは逃げられないらしい。いくらポエミーな台詞を言っていようと隣に際どい服装をした妹がいるのは否定できない。
「なんでお前はそんな服を持っているんだ……」
際どいチャイナドレスを着た阿地にそう問いかける。普通はそんな服持ってねーだろと思ったのだが、本人には理由があるらしい。
「ホントはもうちょっとおとなしめの服だったんですよ、通販で買ったら生地の量と質をケチった露出が多くて薄いモノが届いたんだから仕方ないじゃないですか!」
開き直ったなあ……ちなみに我が妹が買ったのは海外通販だ。一応は写真が載っていて、そちらでは厚めの生地で露出も少なめだったらしい。俺に見せているのは写真と全く違う物が届いたけれどもったいないので見てほしいとのことだ。俺にそんなものを見せてどうしろって言うのだと聞きたいがそんなことは今更なのでグチグチ言う気はない。
「通販の写真をそこまで当てにするなよ。イヤホンから電流がビリビリ出ている写真とか載ってるとダメなものっぽいって分かるだろ? それは服だって相場から離れててどう考えてもその値段じゃ無理ってものがあるだろ?」
「激安通販にはロマンが入っているんじゃないですか、こうしてお兄ちゃんのウブな反応を楽しめるのも悪くないですしね」
自分が通販に失敗したのをここまでポジティブにとらえられる妹というのも珍しい。とりあえずスリットから生足をチラチラ見せるのはやめて欲しい。その格好で外に出たら通報されかねないのを理解しろ。
まあ……多分外に来たまま出られるもんじゃないから俺に見せてるんだろうが……
「ふふん、お兄ちゃんが可愛い反応をするだけでも買ったかいはありますよ、人生万事塞翁が馬とは言いますからね。失敗したのを失敗しただけとしてしまうのはもったいないことなんですよ。こうして失敗を生かしてこそ一流の妹なんです」
まず一流の妹ってなんだよと言いたいのだが、多分自分でも分かってないんだろうな……その場のノリと勢いで生きている阿地に言語化して説明しろなんてのは酷な話だ。
「次から買物をするときはもう少し気をつけろよ? そのうちクレジットカードを持てるとしになるんだなと思うと怖くなるよ」
妹がクレカで何を買うか分かったもんじゃない、正直怖いと言っていい。後始末をさせられかねない俺の身にもなってくれ。
「大丈夫ですよ、これだって写真通りのものが届いてもお兄ちゃん以外に見せる気はなかったですから。むしろ生地は薄い方がお兄ちゃんへのサービスになりますしね」
「頼むからトラブルを起こす妹にはなるなよ? ライン越えのことはしないように気をつけるように」
「はーい!」
どう考えても反省してねーだろという反応をした阿地に呆れながらその日は終わった。ネットなんて危険地帯にアクセスできるものが簡単に使えるのもどうなんだろうなと思わされる日だった。




