051_妹と失言
「お兄ちゃんは私のことが好きですよね?」
「まあ……そうだな」
家族として、妹として好きに決まってんだろと言おうとしたがなんか不穏な気がしたので必要以上には言わない。
「そうですか! これはもう結婚したも同然ですね! 多様性とか言ってますし、せっかくなので妹と結婚できるようになりませんかね?」
「面倒な連中がよってたかって来そうだからその話題はやめろ」
世の中面倒なもんだ、昔は義理ならオーケーなど雑な時代もあったと言うのに、まあそれでも実妹は昔も今も一線を越えないようになっているが(当社調べ)
「だいじょうぶですよ、最近の流れは実妹でも同棲し続ける事実婚が主流ですから」
「お前はさぁ……そんなことを一体どこで調べて……いや、言わなくていいや、消されそうなワードが出てきそうだ」
君子危うきに近寄らずとはよく言ったものだ。歩く爆弾発言スピーカーみたいな妹の深掘りをするべきではないだろう。どんな噂が広まるかなんて分かったもんじゃない。
にしても今は朝飯を食べているってのに危なっかしい発言をねじ込むのはやめて欲しいな。兄妹での関係についてなんてぼんやり朝飯を食べているときにぶっ込んでいいネタじゃないだろ。
「そうですね、もう少しおとなしい話題にしましょうか。お兄ちゃんは私のことが好きだと分かった時点で十分すぎますね」
いちいち文句を言う気は無い。言葉の解釈は自由だし、本人が満足しているならそれでいい、この事で論争すると泥沼になるのは目に見えている。それに嘘はついてないし阿地のことは好きだ。それが兄妹愛だとしても嘘にはならないのだから問題を起こすこともないだろ。
「いやあ、お兄ちゃんが私を好きだと言ってくれるのはとっても嬉しいですねえ、毎日のように言って欲しいですね」
「兄にそんなこと言って貰って嬉しいかねえ……」
「嬉しいに決まってるじゃないですか! まあお兄ちゃんが言わなくても先ほどの発言は録音済みなのでそれで我慢も出来ますけど」
そう言って胸ポケットからICレコーダーを取り出す。スマホがテーブルに置いてあるから録音なんてしないだろうと思っていた。まさかそんなビジネスマンくらいしか使わないであろうアイテムをただの中学生がそれだけのために買うなんて思わないじゃないか。
「じゃ、今日はこれを編集して私への愛の言葉としてリピート再生したいので、MIXしなきゃならないんで部屋に戻りますね!」
そう言ってダッシュで部屋に戻る阿地。MIXをするりユが余りにもくだらないので呆れざるを得ないものの、それを止めることも出来ないし、もうそれでいいんじゃないかな。
その晩は隣から何が聞こえてくるか分からないのでヘッドホンをスマホと繋いで音楽をかけつつノイキャンをオンにして寝た。だから隣の部屋から何が聞こえたかは分からないし、全ては予想でしかないのでそれを追究する気は無い。




