047_明言しなけりゃセーフ
「退屈ですね……お兄ちゃん、楽しいことしませんか」
「楽しい事ってなんだよ? なんか不穏な響きが入っているような気がするんだが……」
「勘がいいですね、そういうことをやろうと言っているんですよ」
ふーむ……確かに阿地はただの一言も具体的に何をするかは言っていない。
「ちなみに何をやるんだ?」
「おや、それを女の子に言わせるんですか?」
「絶対アウトなことのような気がするんだが大丈夫なのか?」
「おやおや、お兄ちゃんは今の私の具体性のない発言に不穏なことを考えたんですか? 私は『楽しいこと』としか言っていないはずなんですがねえ……」
屁理屈を言うやつだ。それならセーフとでも思っているのだろうか?
「ハッキリ言わなければセーフだと思っているのか?」
「お兄ちゃん、ハッキリ何をするか言わなければセーフなんですよ。例えば私とお兄ちゃんがこれからキャベツ畑で収穫をしようと言っても、本当に農園に行く可能性があるからセーフなんですよ」
「それは詭弁が過ぎるような気がするんだがな、それが許されるなら大体の表現はセーフになるぞ」
「キャベツに不穏な意味を感じ取る方が悪いんですよ。ほら、もしかすると今晩の食事にトンカツを作るので付け合わせのキャベツを取りにいくだけかもしれないじゃないですか」
かなり危ないような気がするんだが、チキンレースはオススメしないぞ。危ないとかそういうことを考えないのだろうか? こんな小さな話、消そうと思えば大きな力が俺も阿地も吹けば飛ぶような存在だと忘れてはいないだろうか?
「ま、そんなわけなのでお兄ちゃん、私と一緒にちょっとしたレクリエーションをしませんか?」
「やめとく、俺はまだ消されたくないんでな」
そう答えると、阿地は露骨につまらなそうな顔をしてリビングを出て行った。なんだかなあと思いつつ、自分を律することは出来た。勘に従うのがいいことかどうかは分からない。ただ、そのおかげで今はたまたまセーフだったんじゃないかと思う。
そんなことを考えつつ、言わなきゃセーフと想っている妹に恐怖せざるをえなかった。




