045_妹の夜明け
今朝はキッチンに来たのだが、まだ我が妹は起きていない。いや、その言葉は正確ではないだろう。キッチンと繋がるリビングで阿地のヤツはゲーム機をテレビに繋いで寝落ちしていた。
いや、それがFPSやアクションゲームだったら気にしなかっただろう。そこに映っているのは某有名ギャルゲだった。当然のことながら妹がヒロインとして一番人気のものだ。この前に遊んでいたゲームとは違うのでよくまあ買ってくるなと感心する。
ひとまずコーヒーを飲みながら妹を眺める。『妹や、ああ妹や、妹や』などとしょうもない愚痴を言いたくなった。元ネタは島の美しさに感動してのものだが、妹のほうはと言えばタンクトップにジャージでソファに体を横たえている。顔はともかく行動は美しさと無縁だった。
窓から朝日が差し込んできているというのに全く起きる様子もない。現実は残酷だなあなんて思いながらトーストを噛む。マーガリンたっぷりで目が覚めるな……
「ふぁ……コンプしなきゃ……」
あ、起きた。
そして阿地は寝ぼけた顔で周囲を見回したとき、俺と目が合った。
「お兄ちゃん、今は何時ですか?」
「八時過ぎだな」
「もしかして見てました?」
「朝飯を食べてる間眺めてたよ」
顔を真っ赤にして洗面所に駆け込む我が妹。一応アレを見られちゃマズいという認識はあったらしい。
しばし優雅な朝食を食べてからコーヒーを飲んでいると阿地が着替えてやって来た。
「えー……お兄ちゃん、代償は体で払うので今朝見たことは無かったことに……」
「無かったことにしてやるから体の押し売りはやめろ。そんな払い方されたって困る」
発想が十八禁なんだよ……なんでそんな発想になるかねえ。
「いいから朝ご飯を食べろ。同席脳も夜食抜きでゲームしてたんだろ?」
そう言ってお茶漬けと梅干しを差し出した。
「もう少しお洒落なものは……」
「あの格好で寝てたヤツがよく言う。これのほうが目が覚めるんだよ。ちなみにお茶漬けにはカフェインたっぷりの玉露を使ってるから安心しろ」
お茶漬けに玉露を使うのもどうかと思うが、目を覚ますには効くだろう。寝起きでぼんやりしているヤツにはちょうどいい。
「ズズズ……うまあい!」
秒でお茶漬けをすする阿地。炭水化物とカフェインでようやく目が覚めたのか、目に光りが宿ってきたような気がする。
「美味しい!お兄ちゃんが作ってくれたんですよねえ……そう思うととっても美味しいです」
「誰が作ったかで味なんて変わんねーよ」
正論を言ったはずなんだが阿地は不満そうに言う。
「味が一緒でもお兄ちゃんが作ってくれたと言うだけで食べると気分がいいんですよ。プレミア感ってヤツです」
プレミア感ねえ……人はそれを気のせいと呼ぶのではないだろうか?
まあ本人は満足しているようだからいいんじゃ無いかな。今朝の醜態は忘れてやることにしてのんびりと朝食を食べるのを眺めていた。と言っても一気に食べていたのでそれほど見ていたわけでも無いのだが、お茶漬けでここまで満足するんだなあなんてことを思った。




