041_妹と妹ゲー
今日は我が妹が楽しそうにリビングでゲームをしている。毎回俺を巻き込むことには定評があるのだが、今回は何も言ってこない。その理由は多分プレイしているゲームにあるのだろう。
『お兄ちゃん大好き!』
妹が妹ゲーをするという何とも世も末な光景を見せられているのだが、俺は言った移動言う反応をすればいいのだろう。阿地は妹に都合の良い選択肢を選んでフヒヒとうわずった笑いをしている。
「いやーやっぱり可愛い妹に愛される兄を愛でるのはいいですねー」
なお、そんなことを言っているがギャルゲーなので兄の方は立ち絵すら無い。妄想のみで兄を思い浮かべている根性は見上げたものだと思う。そのくらいの妄想は出来ないとギャルゲーなんて出来ないのかもしれないが。
『私、お兄ちゃんのためなら犯罪だって出来ますよ……』
あ、ダウナー系ヤンデレ妹ルートに入ってる。そもそも俺はそのゲームをコンプしているのでキャラごとの背景は知っている。今阿地が攻略しているのは兄のためなら他の女を消すことも厭わないヤンデレの化身だ。発売当時はあまりの内容に賛否分かれるほどの描写が或る妹だ。
「おお……妹の言いなりになるお兄ちゃん、これはいいものです」
どこかの鑑定家のようなことを言っている。もっとも妹を鑑定するという異様な職業があるとすればだが。
他人様には見せられないであろう笑顔……笑顔か? とにかくそんな顔をして画面を見ている阿地を俺はコーヒーを飲みながら生暖かい目で見ていた。
兄を攻略する妹をどんな顔で見ればいいのだろう? そんなことを書いているマニュアルがあれば万札一枚までなら出すぞ。
『お兄ちゃん……』
おっと、ヤンデレが本気を出してきたな。一応12歳以上対象なのでよほどの描写があったりはしないのだが、それでもゲームの中では死人が出るようなことは起きるルートだ。
ただ、阿地のほうはと言えばニッコニコで妹が暴れ回る映像を見ている。並の妹キャラの好きくらいなら普通にドン引きしていたような描写を心底楽しそうに見ている。メンタルが鬼強なのだろう。少なくともシリアスシーンで妹に告白されているところでニヤけるようなものではないと思う。
「お兄ちゃん! 見てください! 妹が兄のために敵たちを殺戮して回ってます、子の精神は同じ妹として見習いたいですね!」
頼むから変なことを見習わないでくれ。というか明らかに画面にはゴア描写が出ているのにそれを心底楽しそうに見ている自分の妹が怖くなる。なんと言いますか、正気か? と本心から訊ねたくなる。とても正気とは思えないのだが、人間真面目に現実と向き合えない人はいる、それが妹であるというのは残念な気もするが、本人が苦痛を感じていないならいいか。
そんな妹の言葉を適当に聞いているとエンディングになった。その妹ルートは最終的に人類が兄妹以外滅ぶという妹好き以外がプレイしたときに大変不評だったものだ。
しかし、なんというか、自分の妹があのルートをだらしない笑顔で進めていっているのは正直狂気を感じないでもない。色々と言いたいことはあったが、下手な話をして妙なことに感化されても困るので黙っておいた。君子危うきに近寄らずとはこういったことを言うのではないだろうか、そう思ってそっと黙って妹を眺めて過ごした。




