40.6_妹とツルツル滑る話
「お兄ちゃん、今退屈なので面白い話をしてください」
「なんだその無茶な要求は……そんな面白いことがポンポンあるわけねーだろ」
「いやいや、お兄ちゃんが私への愛を語るだけでも十分に面白い話ですよ? ほら、ハードルが低くなったでしょう? だから退屈しのぎに私への愛をささやいてください」
「どんなハードルだよ、あと退屈しのぎに愛をささやくってどんな関係だよ、謎すぎんだろ」
相変わらずの寝言のような発言に呆れつつ、そんなに楽しい話が転がっていてたまるかと言いたい。まあ阿地への愛情を言うなら……いや、家族愛について語ったらコイツ切れそうだしやめとこう。
「はー……お兄ちゃんは私への言葉も話せないんですねえ、私はお兄ちゃんにどれだけ好きか一時間以上軽く話せますよ」
「自分の異常な基準を人に押しつけると不可能なことをさせることになるから嫌われるぞ?」
「いいですか? 不可能なんて事は無いんですよ。お兄ちゃんだって私の愛情を知れば十年くらい毎日愛について語れるようになるんです」
いくら何でも無茶な理屈だろう。正気の沙汰とは思えないのだが、本当にそれでいいのかと疑いたいよ。
「そんな校長の話より長くなりそうなことを兄に語るのはやめてくれ」
「失礼ですね! なんかいいことを言っている雰囲気を出しつつ内容の無い校長先生の話と一緒にしないでください!」
「お前はお前で校長に失礼だな!」
そんな風に校長に被害がおよびつつ、くだらない話を続けていた。
「なあ、俺について語ることがどうしてそんなにあるんだ?」
「そりゃ日記にお兄ちゃんとの愛の記録を毎日数ページ書いているといくらでも語れるようになりますよ」
「どう考えても捏造百パーセントの記録を残すのは辞めた方がいいぞ。未来の子孫がお前の日記を見つけて頭を抱える未来しか想像できないからな?」
そんな日記を孫が見つけたら頭を抱えてどう処分しようか悩むだろうと思う。未来に負債を残すのはやめろと言っておきたい。
「私とお兄ちゃんの子孫なら納得の亡いようじゃないですか?」
「俺を勝手にお前の妄想に巻き込むのはやめてくれないか……」
内心の自由はあるし、自分しか読まない日記は認めるとして、俺を巻き込むのはお門違いだろう、もう少し常識というものを考えてほしい。
そもそも俺たちが兄妹だって事すら無視した勝手な意見だ。バレなきゃ何してもいいという思想をわかりやすく出してんなとは思う。俺だってなんでも出来るわけじゃないし、大概シスコンだが倫理を持っていることくらいは理解して欲しい。
「分かりましたよ、しかたないですね、日記のタイトルにワタシの夢小説って書いておきますよ、それなら文句ないでしょう?」
「各所を敵に回しそうなタイトルはやめてくれよ……」
俺はどうか兄妹が平穏に過ごせるように祈る。波瀾万丈なのは悪いことではないが、改めて自分でもめ事を起こすのは違うなと理解してしまった。




