040_妹とマンガを読む
その日、退屈しながらリビングでマンガを読んでいた。部屋で読まないのは部屋にこもっていると阿地が乱入してくるからだ。分かりやすいことに俺がいなければ部屋に来ずこっちに来るのでこうしているわけだ。
思春期って楽しいなあなんて感想をマンガを読みながら思う。俺の生活だってラブコメではあるんだがな……ヒロインが妹になってしまうわけだが。
「お兄ちゃん! ここにいたんですか! いやーさがしましたよ」
どこぞの勇者一族みたいな事を言う阿地、その台詞はイラつくからやめろ、苦労して探し歩いたあげくレベル1で仲間になりやがったどこぞの王子を思い出す。
「マンガを読んでんだよ、最近流行のヤツも抑えとこうと思ってな」
「おお、お兄ちゃんも意外とミーハーなんですね」
失礼なことを言うやつだな。奥から指示されているということは面白いって事だろうが。そのくらいは分かってほしいな。
「面白いぞ」
そう言うと、俺が読んでいる本の表紙を覗き込む、それから背後に回り、俺の肩に首を載せてマンガを覗き込んできた。
「ッチ……」
「何が不満なんだよ?」
理不尽すぎる舌打ちについ質問をしてしまった。
「お兄ちゃんがえっちなマンガを表紙を隠して読んでいるって期待したんですよ。そのマンガ、なんのトリックも無い普通のマンガじゃないですか」
「当たり前だろ。まずお前ここはリビングだって分かってるか? もし仮に、仮にだが読んでたとしてもこんなとこで読むわけないだろ。そのくらいの空気は読めよ」
「いや、お兄ちゃんが私に見せつけたいのかと思って」
そこまで変態じゃねえよ! コイツの中での兄像はどうなってるんだ、エロマンガもビックリな発想をしてるんじゃないですかねえ? 俺は当たり前の全年齢マンガを読んでるのにがっかりされる謂れなんて無いだろうが!
そんなことを思いながらもページをめくると主人公の妹が出てきた。このマンガだと妹がヒロインとの間で確執を持っているという設定だ。
「ねえお兄ちゃん……ちょっと聞きたいんですが?」
真倒れの背後からマンガを覗いている阿地が声をかけてきたので『なんだ?』と返した。
「これ、妹が負けヒロインじゃないですよね? 最終的には妹が大勝利する話なんですよね?」
「まだ読んでないが……どこにそんなフラグがあると思ったんだ?」
「いや、ヒロインに妹がいたら最後に勝つのは妹に決まってるじゃないですか?」
どんな発想だよ、妹がヒロインだったとしてもそれまでの積み重ねがあってのエンディングになるだろうが。なんで妹ってだけで無条件に勝つんだよ、おかしいだろうが。
「……お兄ちゃんは分からないんですね、じゃあ私が読んでから問題無いマンガだったらお兄ちゃんが続きを読んでください」
そう言って堂々と検閲宣言をしてから俺から本を取って部屋に帰っていった。いや、勝手すぎませんかねえ……
マンガが無くなってしまったので仕方なく部屋に帰った。本来はこんな事はしないのだが、続きが気になるところで取り上げられたのでネタバレレビューを読むことにした。
通販サイトのレビューには……『ぎゃあああああああ』という隣の部屋からの声から分かるとおり、妹ではなく、最後に選ばれたヒロインは幼なじみだった。なお、それからそのマンガが俺の元に返ってくることはなく『これは禁書です!』という妹の理不尽な宣言で取り上げられてしまった。言論の自由って大事なんだなと思うそんな日だった。




