033_妹は過去を知りたい
その日、家の中で優雅にコーヒーを飲んでいるときに阿地がやって来た。
「お兄ちゃん、私にも一杯お願いします」
「はいはい」
俺はいつも通りキッチンに行ってインスタントコーヒーを入れてお湯を注いだ。それから妹の好み通りにいつもの様に砂糖を……入れようとしたのだが無かった。自分で飲むときはブラックだったので気が付かなかった。どうしたものだろう。
「お兄ちゃん、どうかしましたか?」
「ああいや、砂糖を切らしててな……角砂糖が無いんだ。その……合成甘味料ならあるんだが……ダメか?」
「あれ好きじゃないんですよねー。お砂糖が無いんですか、じゃあブラックで」
「悪いな、後で買っとくよ」
そう言ってからコーヒーをテーブルに置き、スマホを取り出し砂糖のパックを注文することにした。その時視線を感じたのでそちらを見ると阿地が俺のスマホを興味深そうに見ていた。
「お兄ちゃん、注文りれ「ことわる」」
「まだ全部言ってないじゃないですか!」
「どうせ注文履歴を見せろって言うんだろ! 嫌に決まってんだろうが!」
まったく、いくらセンシティブなものは買ってないにしても触れていい範囲を超えた話題だぞ。
文句を言いたそうにしている妹を放っておいて、コーヒー用の砂糖を注文した。そろそろ残高がキレるのでコンビニでプリカを狩ってこなくちゃな。
「むぅ、じゃあお兄ちゃんは妹に見せられないような買い物履歴なんですか?」
「そうだよ、当たり前じゃん」
妹に堂々と見せられる買い物履歴をしている兄がどれだけいるというのだろう? 多かれ少なかれ気まずくなるようなものを買っているに決まっている。見られたくないからお断りだね。
「開き直りましたね……ぐぬぬ……じゃあ私の購入履歴見せるのでおあいこってことでどうです?」
「お前が何を買ってても驚かない自信があるからおあいこにはならんな」
きっぱり断るノーと言える日本人だ。妹を甘やかすにしても自分を犠牲にはしたくない。
「はあ……お兄ちゃんはケチですねえ。まあいいでしょう、ウチに届く荷物の重さを量って中身を予測するのも楽しいですしね」
「そんなことしてんの!? 怖っ!」
しばらくマンガは電子書籍で買った方が良いかもしれない。比較的特定しにくいものだが、正直後ろめたいものもあるからな。
「妹がお兄ちゃんのことを知りたいと思って何が悪いんですか? ごく普通の当たり前のことでしょう?」
なんだその当たり前は、コイツだけ別時空から来たんじゃないだろうか? 正直異世界転生してきたといわれても驚かない気がする。
「頼むから程々にしておいてくれよ。あと、あんまり細かいことをすると兄妹仲が悪くなるのは分かってるよな?」
「え? お兄ちゃんの好感度稼ぎのためにやっていたんですけど!?」
コイツマジかよ……怖いんですけど、性格が歪んでませんかね?
「とにかく、人のスマホを覗くのは禁止! あと必要も無いのにプレイバシーをあけすけに見せないこと!」
「ちぇ……お兄ちゃんの気を惹くものをたくさん買っているんですけどねえ……」
話はそれで終わったが、阿地の購入履歴は興味を通り越して知らない方が幸せだろうと思えるので見ないことにした。




