029_見えてる妹
夕食後、お茶を飲みながらスマホを弄っていると阿地が声をかけてきた。本人は食後のアイスを探しているらしく冷蔵庫を開けているのだが……
なんというか、短いスカートで下段の冷凍庫を開けているので、何がとは言わないが見えてしまう。そっと目を逸らして生返事を返すのだが、阿地は俺に声をかけ続けてくる。はしたないとハッキリ言うべきだろうか? それを言うと見られていたことがバレて恥ずかしいのではないか。
「おにーちゃん、アイスいりますか?」
「ああ、適当に見繕ってくれ」
生返事を返している自覚はあるのだが、ガン見するのも違うだろう。そうして目を逸らしていると、こちらに阿地がバニラアイスのカップを持ってきた。
「お兄ちゃん、どうぞ」
そう言われ手を伸ばしたのだが、その時のこと、何故か阿地はソファの上で体育座りをしている。言うまでもないが丸見えである。
「あれー? お兄ちゃん、どうかしたんですか? まるで何現実から目を逸らしているような顔をしていますね」
「お前……わざとか?」
「何の事でしょーねー……? お兄ちゃんは私がわざと何をしているって言うんでしょうか? ほらほら、言いたいことがあるならハッキリ言ってくださいよ」
露骨な煽りだ、こんな安い挑発に乗るわけが……
「見えてる」
「おや、お兄ちゃんは鈍いですね、見せてるんですよ。わざわざ見えても問題無いものをはいてるんですから問題無いでしょう。ふふふ、お兄ちゃんもここまでやれば見てくれるんですね」
「見せてるんだろうが……」
そう恨みがましい口調で言ったのだが、阿地は意に介した風もない。平然とお茶を飲みながらこちらを見てニヤニヤしている。兄を使ってもてあそぶのはやめて欲しい。
「クスクス……お兄ちゃんも男の子なんですねえ、もっと見ますか? 安心してください、お兄ちゃん以外に見せたりしませんから」
「お前、兄をからかって楽しいか?」
「ええ、とっても」
迷うこと無く言いやがった。俺の問いかけから食い気味にそう答える迷いの無さは結構なことだと思う。それにしても縞だったのはギリギリ健全といったラインを守った結果だろうか? そんなくだらないことをよく考えても答えは出てこないが、妹なりにギリギリのラインは守っているのだと思いたい。
「さて、おふざけはこのくらいにしておきましょう。お兄ちゃんウケのよさそうなものをわざわざ通販で買ったかいはありました」
「もう少し有意義な金の使い方をすることをお勧めするがな……」
「お兄ちゃんが反応してくれるなら下着の一つくらい安いものですよ」
ためらいなくそう答える阿地に何も言い返すことは出来なかった。人として歪んでいるような気もするが、それほど高いものではないのだろう。
「俺の反応を楽しむ必要は無いだろうが、あんまり無駄遣いするなよ?」
「お? お兄ちゃんがそう仰るということははいてない方が好みということですか? 私も流石にそれは少し恥ずかしいんですが、でも……お兄ちゃんがそれを望むというのなら……」
「マジでそれはライン越えなのでやめてくれよ? いくら妹でもやって良いことと悪いことがあるからな?」
「お兄ちゃんが楽しんでくれるならそれはやって良いこととだと思うんですが?」
「俺を世界の中心みたいに考えるのは頼むからやめてくれ」
からかわれている自覚はあるのだが、断言するのは正直すごいと思う。志向の方向が明後日を向いているのはさておきと言うことだが。
「ねえお兄ちゃん、また見たくなったらいつでも言ってくださいね。お兄ちゃんとの思い出なのでいつでも再現しますよ」
縞パンが思い出って……思想が強いやつだなあ。何にせよ、多少歪んだ思想の妹との会話はそれで終わった。その日一日、俺の顔を見るなり楽しそうな顔をしていたのは忘れられない。きっと阿地は俺へのサービスだと言っているが、俺の反応を見て自分が楽しみたくもあったのだろう。サービス精神だけでないとするならば、少しだけ気が楽になった。




