028_妹、欲しがる
今日は平日のお昼、アンニュイな時間帯を満喫していた。PCで動画サイトを複窓しながらストリーミングで音楽を聴くのが好きなので、これ以上に亡いくらい気が楽な時間だった。
「お兄ちゃん! ゲームがしたいです!」
はい、平和な一日はおしまい。どうせまたコイツに無理な話を持ちかけられるのだろう、聞かなくても予想はつく。
「何があったんだよ?」
聞かないと不機嫌になって愚痴を聞かされるので聞かざるをえない。大体言いたいことの内容は良く分かっている。どうせ『あのこと』に決まっている。俺まで巻き込まれるのはゴメンだ。
「クロック2が発売されるんですよ!? こんなの初日に絶対欲しいに決まってるじゃないですか!」
だと思った、と言う言葉は飲み込んで無難に『初期ロットは争奪戦じゃないかな』と言うクロック2とは新型のゲーム機だ。メーカーにもある程度の対策はするだろうが転売が消えるとは思えない、初日にネット闇市に並ぶスイッチの山が目に見えるようだ。
「別にそんな急がなくてもよくね? 今は結構PCのヴェーパーで遊べるゲームも増えてるだろ」
そんな言葉を言ったのだが、聞いちゃいない。姉妹には手を差し出してきて『ちょっとご協力をですね……』などと言ってきたので、無理なもんは無理と言っておいた。転売に手を出す性格でもないし黙って普及するまで待ってくれるだろう。
しかし、マイシスターはめげない、なんなら徹夜も辞さないというので、なんでそこまで欲しいんだよとつい訊ねてしまった。
「久しぶりに複数の妹ヒロインギャルゲがクロック2のローンチタイトルにあるんですよ! これは是非手に入れないといけないでしょう? ねえ、お兄ちゃんもそう思いますよね」
ゴリ押しの勢いに負けそうになったが、鋼の意思で『そういう理由なら素直に貯金して買えよ……なんで妹のギャルゲに金を出さなきゃならないんだ』その言葉に反論は出来なかったらしく、ゲーム機は阿地が貯金をして買うことになった。
まだ発売までは時間がある、しばらく本気で頑張ればなんとかなるだろう。そう思って俺はコーヒーを一杯飲んだ。いつもと変わらないコーヒーのはずだが、妹のお願いを拒否した後に飲むコーヒーは少しだけいつもより苦いような気がした。




