024_妹は知りたい
「おにーちゃん、この前貸してもらったマンガ、面白かったので次の巻を貸してもらえますか?」
「ああ、そこの本棚にあるから持ってけ」
俺はいきなり入ってきた阿地に適当な対応をする。そう言えばこの前阿地にマンガを何冊か貸していたのを思い出した。気に入ったものでもあったのだろうか?
「ええっと……ここでもない……これも違う……」
「どうしたんだよ? どのマンガの続きが欲しいんだ?」
「ああいえ、お兄ちゃんの部屋の本棚にえっちな本でもないかなと」
「何を探してんだよ……」
しれっと家捜しをするんじゃないっての。なる程、言い訳をしてから好き放題本棚を漁ろうとした訳か、勘弁してくれ……
「お兄ちゃんの趣味を知っておくのは妹の義務ですからね」
「だとして誰でも見える本棚に置いてると思うか?」
「それもそうですね、ちょっといろいろ調べさせてもらっていいですか?」
「さらっと本を借りに来たっていう建前を投げ捨てたな」
そこまで態度をクルクル変えるやつも珍しいなと思うと同時に、ある意味清々しいほど本音で生きてるやつだと思う。
とはいえ、妹に家捜しさせるほど俺も恐れ知らずでは無い。髪の毛一本見逃さないであろう妹への信頼は厚い。
「くだらないこと言ってないで帰った帰った」
隙あらば兄の弱みを握ろうとする妹はあんまり好きじゃないかな。せめてもう少しバレないようにしてくれないものかと思えてならない。
「むぅ……私の勘がお兄ちゃんだってそういう本を持っているに違いないと言ってるんですがね」
「自分の勘を信じるのは勝手だけど、ソレを人に押しつけるのは身勝手が過ぎるぞ」
「そんなこと言って、お兄ちゃんだって私のことを知りたいでしょう?」
「いや、別に。阿地はきちんとそこに居て見えているんだからそれ以上を知る必要があるか?」
阿地は確かにそこに居る。それで十分じゃないか。他の何を知る必要があると言うんだろう。
「お兄ちゃん……その言い方はズルいですよ。ではもっと私のことを知っちゃいますか?」
なんだか言い回しに不穏な感じがしたので「必要以上に知る気は無いよ」と言っておいた。
妹に嫌われていないならそれでいい。無駄に知らなくて良いことを知って苦労を背負い込むつもりは無い。阿地がそこに居て幸せそうならそれで十分だし、それ以上を望むつもりは無い。
「はぁ……お兄ちゃんは私に」




