023_朝食(作:妹)
その日は朝から暖かな光が窓から差し込んでいた。それはいいことなのだが、キッチンの方から何かを焼いている匂いがする。そう言えば今日は朝食の当番は阿地の役目だったな。割と来たいができそうだし、行ってみるか。
軽く着替えてドアを開けキッチンに行くと、ベーコンエッグとトーストが置いてあった。王道の朝食で安心してしまう。
「お兄ちゃん! 朝ご飯は出来てますよ、食べましょうか」
「そうだな」
「ちなみにこちらは特製スムージーですのでどうぞ」
「気が利いてるな……」
どうやらバナナとパイナップルの匂いがするスムージーらしい。美味しそうなのでゴクリと飲もうとしたところで気が付いた。
「なあ……念のため……本当に念のために聞いておくが後ろめたいものは入ってないよな?」
バッ
ものすごい勢いで顔を背けられた、これが答え合わせというやつか……
「あのなあ、一応俺らは兄妹なんだからあんまり変なもの入れんなよ、まだ青酸カリでも入ってた方が納得できるぞ」
何が入っていたかは聞かないでおこう。聞くとレーティングに影響の出そうなものが入っているような気がしてならないので曖昧なままにしておいた方がいいだろう。
まったく、油断もすきもありゃしない。そっとスムージーをどけると朝食を食べようとしたところでもう一杯スムージーが出てきた。
「どうぞ、こっちは無添加ですよ」
わざわざ用意していたのか……騙している様子もないし、こちらは本当に普通のスムージーなのだろう。
「わざわざ無添加を別で用意する手間はかけるんだな」
「お兄ちゃんに私が作った朝ご飯を食べて欲しいですからね」
だったら初めからこちらを出せばいいのにとは思うものの、それは流石に黙っておいた。これも一応阿地なりの配慮なのだろう。そちらには妖しげな雰囲気もなかったし、口をつけても阿地が無反応だったので特別な『何か』は入っていないのだろう。だったらそれでいいんじゃ無いだろうか。
結論として朝食は美味しかった。目玉焼きもトーストもベーコンも焼き加減は完璧だった。だからこそ初めにケチが付いたのが惜しいと思う。でも妹が頑張って作ったものなのだからきちんと食べきるのは兄の義務だろう。
全て食べ終わってごちそうさまをしたときだ、食べるなりソファに寝転んでいた阿地がこちらを手招きするので近寄ってみると、いきなり抱きつかれた。
「ん~お兄ちゃんはいい匂いですね~、これで寿命が十年延びますよ」
「お!? おい阿地!? どうしたんだよ?」
「ふぇ……? どうもしませんよ? いつもどーりじゃないですかあ」
テーブルに目をやると阿地は自分の分のスムージーも飲んでいて、更にもう一カップ、俺に出そうとしていたスムージーのグラスが空になっていた。
「お前何混ぜたんだよ!? コンプライアンスって知ってるか?」
「いいじゃないれすかぁ……お兄ちゃんが飲んでくれないからですよぅ」
一体何を混ぜたのかは聞かないでおこう。知らぬが仏という言葉もあるしな。そのまましばらく俺に抱きついていた阿地は眠ってしまい力が抜けたところで俺は自由の身になった。本当に何が混ざっていたのだろうと気になってしまうが、多分知らない方がいいものなんだろうと言うことだけは確信を持って言えた。




