022_妹は冒涜的である
俺はその日、呑気に朝食をとっていたのだが、途中で起きてきたマイシスターが冒涜敵なことを言い始めた。
「お兄ちゃんと一緒だと何も怖くなんて無いー」
「なんだその首を噛みきられそうな歌は……」
「お兄ちゃん、そのネタ何年前だと思ってるんですか? 若者に通じなければバレないんですよ?」
どこぞの宇宙生物みたいなことを言い始めた阿地に呆れつつ、まあ一杯コーヒーでも飲んで落ち着けとなだめた。
それにしても、コイツは怖いもの知らずだな、ネタにしてももう少し安牌なものがあるだろう。
「朝っぱらから不穏なこと言ってないでこれでも飲んでろ」
そう言ってマグカップを差し出した。阿地は満足そうにソレを飲みながらテーブルに着いた。そこで俺は雑に菓子パンを差し出す、美味しいと言いながら阿地は食べている。ちゃんと美味しいと言ってくれるくらいには良心があるようだ。
「ねえお兄ちゃん、ハッキリしない事っていいとは思いませんか?」
突然の哲学的な問いかけが飛んできて少し考え込んでしまった。ソレを困惑していると見て取ったのか、わざわざ解説を始めた。
「良いですか? 観測されなければ状態は決定しないんですよ。シュレディンガーの猫が有名ですが、例えばお兄ちゃんと私が同じ部屋に入って三日過ごしたとして、その三日をきちんと観察してみなければ何かがあったかどうかは確定しないんですよ」
「最悪なシュレディンガー野猫の解説ありがとう。黙って飯を食え、後、シュレディンガーの生まれた欧州のキリスト教には姦淫するなかれって言う決まりもあるからな」
「お兄ちゃんは食う気が読めませんね。大丈夫ですよ、三日間部屋の中でネトゲに熱中していたなんて言っても検証のしようが無いんですよ」
言ってることはシュレディンガーの理論と言うより、「バレなきゃセーフにしか聞こえないのだが、それでいいのか?
一杯コーヒーを飲みつつもう少し話させてみたが、結局屁理屈を延々とゴネる阿地を眺めることになった。
「そろそろ話し終わったか? いい感じに自己陶酔しているとこ悪いが、会話内容の大体がエグかったから大体カットしておいたぞ」
「お兄ちゃんは私の愛の力を信じていませんね? 私はお兄ちゃんといくら仲良くなっても問題無い妹なんですよ」
その感情は愛とは別の何かじゃないかと思うんだよなあ。本人は至って真面目に語っているようだが、詭弁に何とか正当性を漬けようとしているようにしか見えない。
「お兄ちゃんはロマンが足りないんじゃないですか? 禁止されていることのほうが背筋がゾクゾクして興奮するじゃないですか」
「歪みすぎだろ、お前の考えが歪んだ一端を担っていると思うと悪いことしたなって思うよ」
「謝る必要は無いんですよ、私がお兄ちゃんを好いていることを否定しないでください」
言ってることはともかく、それでいいのかという気がするんだよな……アウトなら韻をそのうち踏むんじゃないかと心配していたせいで、朝食は途中から味を感じなかった。
阿地はそれだけ言って朝食を終え、部屋に帰っていったが、なんだか人の自由さを感じさせる一件として心に残ったのだった。




