021_妹からの救援要請
「お兄ちゃん、たしか『シスター・ファンタジア』やってましたよね? ちょっと水属性の強キャラが必要なんでサポート入ってくれますか?」
突然ウチの妹がそんなことを言い出すものだから思わず言ってしまった。
「俺のソシャゲ事情をどうしてそんな詳しく知ってるんだ……」
ちなみに俺は水の環境キャラを持っている。しかも主力にしているので今回のイベントは余裕で周回できていた。問題はどうして阿地がそれを知っているかのように話していることだ。妹ゲーなので阿地にはプレイしているのを黙っていたし、俺だって阿地がプレイしているのを知らなかったのに……
「妹はお兄ちゃんの事情を子細に知っているものです。常識ですよ?」
随分と偏った常識もあるものだと思う。どこで常識を習ったのか問い詰めたくなるほどだ。
「そう言えば俺のフレンド欄に『アチ(はあと)』って名前のプレイヤーがいるんだが……」
「わたしですね」
「ブロックしていいか?」
たくさんフレンド申請が来たからって一括承認した俺が悪いのは理解できるんだが、しれっと兄が始めたゲームを察知してフレンドに潜り込むテクニックはスゲーなと思うものだ。
「ダメですよ! お兄ちゃんのアカウントはしっかり追っているんですから、ブロックされたらアカウントを作り直さないとダメじゃないですか」
なあ……ブロックされたら諦めずにアカウントを作り直すって発想はどうかと思うぞ? 妹だからって何やっても許されると思うなよホントさ。
とはいえ、逃げられそうもないのでフレンドへ貸し出すサポートキャラをとっておきの水属性キャラにしておいた。なんでコイツが俺の所持キャラを知っているのかはさておき、確かに持っているのだから好きに使ってくれ。レベルもカンストしているし、負けることは無いだろうよ。
「なるほど、これがお兄ちゃんの女ですか……」
「お前な……所持キャラを人の女扱いするなよ。まあまあ発想がヤバいぞ」
そんなことを言いつつ阿地はスマホでキャラを選択したようだ。効果音で分かる時点でどうかと思うのだが、その後聞こえたボイスからゲーム序盤であることに気が付いた。その進捗具合なら負けるような相手じゃないだろうな。余裕も良いところだろう。
そのまま少し待っていると敵キャラの断末魔の悲鳴が上がった。圧倒的なレベルの力でねじ伏せられたのだろう。そりゃエンドコンテンツまで到達済みのプレイヤーキャラをサポートに使ってるんだから負けるはずがない。
「よっしゃあ! お兄ちゃんと私の愛の力で勝ちましたよ! 圧倒的な大勝利です!」
「いや、キャラのレベルの暴力だと思うんだがな……」
「だとしても、お兄ちゃんのキャラで私が勝利するのは気持ちいい事じゃないですか? あ、お礼に気持ちいいことします?」
「受け取り用によってはヤバイ発言をするんじゃない。はいはい、勝てて良かったな。それじゃフレンド切るぞ」
俺がフレンドから削除しようとしたところで阿地から泣きが入って、しばらく議論になった末、阿地がおとなしくプレイする限りはフレンドとして残しておくというところに着地した。
その後、一日ゲームをプレイしていたようだが、俺の所へ翌日サポートキャラとして使用されたときのボーナスが大量に届いていたのだった。




