162_妹と世界一役に立たない知識
今日は平和な朝だ。窓からは朝日が差し込んでいる、こんな日は平和に過ぎていって欲しい。たまには何もない日があってもいいことだ。
「ん……ぐ……」
さわやかな朝なので、朝食はご飯とトーストどちらがあうだろうか? トーストだけだと味気ないし……
「う……あ……ん……」
よし、今日の朝食はご飯に梅干しにしよう。人間白米に梅干し食えれば十分贅沢と言っていいんじゃ無かろうか?
そうして朝食を決めて部屋を出る、隣から聞こえる艶めかしい声は無視することにしている。あんなもん真面目に相手してたら今頃どうなってる分かったもんじゃない、平和に暮らすなら細かいことは気にしないに限る。
だってそうだろう? 世の中には『藪をつついて蛇を出す』なんて言葉があるじゃないか。わざわざトラブルになるのが目に見えているところに近寄らないのも一つの所謂処世術だ。
キッチンに行ってご飯を茶碗によそって梅干しをとりだしている辺りで血気盛んに妹が飛び込んできた。家の中だってのにそんな大騒ぎするようなことがあるのかよ?
「お兄ちゃん! どうして私の部屋に来てくれないんですか! 私はお兄ちゃんを思って……」
「はいストップ、何をしているかなんて知らないし知りたくもないんで、トラブルを送りつけてくるのはやめてくれないか?」
まったく、朝っぱらから何をやってたんだろうな? 分かりたいとも思わんよ。
しかしまあ、阿地の方は不平があるようだ。そんな勝手な行動に付き合う義務なんて微塵も無いだろう。何をしていたか深掘りすると、世間様の怒りを買いそうなことをしないでほしいものだ。
「朝飯にしようか、ご飯は用意してあるから、ふりかけなり梅干しなりたくあんなり、好きなものを出して食べていいぞ」
これ以上の会話はロクな結果をもたらさないだろう。余計なことは知らなくて良いんだよ。世の中曖昧にしておいた方が結果として良いことがあると言うのは理解していてほしいもんだ。
「じゃあふりかけでももらいますかね」
そう言って阿地はふりかけのパックを一つ開けてご飯の上にかけた。コイツはあんまり漬物を食べないんだよな。
「それでですね、もそもそ、お兄ちゃんはもぐもぐ、妹を大事にするべきだと思うんですもそもそ」
「食べるかしゃべるかどっちかにしてくれ、そんなに間に咀嚼音を挟まれたら会話の内容がは行ってきやしない」
「なるほど、お兄ちゃんは咀嚼音ASMRが好きではないと……これは新しい知見を得ましたね」
「お前そんなしょうもない知見が何の役に立つんだよ? この先一生役に立たないで有ろう事を保証してやってもいいぞ?」
そう言うと、妹はドヤ顔で言った。
「世間の評価なんて気にしてたらお兄ちゃんに愛情なんてもてませんよ、だからこの知見は私だけに役立てば十分なんです」
そう澄んだ目で断言をする妹を否定することは出来なかった。まあ一生のうち一度くらいは役に立つかもしれないなとは思ったのだった。




