155_妹と平穏な午後
退屈で平穏な時間を過ごしていた。コーヒーを飲みながら、スマホを操作している。SNSでのやりとりは楽しいものだ。
炎上とは無縁の平和な生活、やはり平穏が一番なんだなと思い知る。どうにも妹がいると波瀾万丈な人生を送ることになる気がしてならない。今は当の本人が寝ているので何の問題も無いだろう。
あくびをしてから、あくびが出来るほど平穏なんだなと感慨にふけることになる。温めのコーヒーを飲みながら、駄文をSNSに書いていると通知が来た。
フォローの通知だった。駄文を垂れ流しているだけなのだが、このアカウントをフォローしてくる物好きもいるんだなと感心しつつ通知欄を見た。
『妹系美少女アチ』
そういう名前のアカウントにフォローされていて頭が痛くなりそうだった。名前がアチになっているのはこの際問題無い。どうせ同じような名前の人はいるだろう。問題はこのひっそりしていたアカウントが妹に見つかったことだ。これはゆゆしき問題である。
これはどうするべきか……最近の変更でブロックしても書き込みは見られるようになってしまっている。このSNSの仕様変更はまあクソだと思うのだが、環境に文句を付けても仕方ない。どうしようも無いことを愚痴ってないでこのアカウントに対処しなくては……
しばらく考えるが、上手い対処が思いつかない。ブロックすれば絶対に文句を言われるだろうし……どうする?
いや、待て、まだ妹にこのアカウントが本人確認されたわけではない。妹のことを書き込んでもいないはずだ。ならば……このまま触れないのが正解ではないだろうか?
そう考えて気にしないことにした、いや、気にしないフリをすることにした。
そのうち別人だと思えばフォローを外すだろうと思う。ミュートも考えたが、ミュートしたのがバレると、あのアカウントをミュートしなければならない立場だということがバレる。ソレは歓迎出来ることではない。
そのまま日常的なことを書き込みつつ、いくつかの細工もして置いた。粗末なトリックだが、多少は効くかも知れない。
そんなことを考えていると、阿地がやって来た。料理を作り出したので俺はスマホをポケットに入れて『今日のメニューは何にするんだ?』と聞くと、『はい! 愛情たっぷりのグラタンです!』と答えが返ってきた。一々愛情を強調する必要があるのかと思いながらも、調理している様子を見ていた。
作りながら阿地は時折スマホを取り出していた。何かを確認しているようだが、なんだか胡乱な目をしている。
そんなことをしながら待っていると料理が出来上がった。妹はオーブンで焼いているときに頻繁にスマホを確認しては妙な顔をしていた。
それから夕食を二人で食べて、プライベートな時間になった。
部屋に戻ってアカウントを確認すると、妹らしきアカウントからフォローが外されていた。小手先の誤魔化しでもやってみるものだなと思いながら、俺は予約投稿の機能があってよかったなと感謝したのだった。




