153_負けないゲーム
「お兄ちゃん! 退屈ですし、ゲームをしませんか?」
「何のゲームだよ」
妹がいきなり提案してくるモノだからそう聞き返した。
「勝った人は負けた人に自由に命令出来るゲームです、ちなみに敗者に一切の拒否権は無い」
「人権くらいは敗者に与えてくれないかなぁ! その言い方だと聞くのも書くのもよくないような命令をする気だろ?」
当然阿地は敗者に人権など認めてくれないだろう。兄として妹がそうするであろう事に自信はある。
「お兄ちゃんは私のしようとすることをよく理解してくれていますねえ! 妹として感謝しますよ!」
「堂々と人権剥奪するのを褒められるとでも思ったか? そんなですゲームみたいなモノに参加するわけねーだろ」
というかゲームってそんな命を賭けるものじゃないだろ、そんなことをするのはホビーアニメの中の世界だけで十分だ。というかリアルでやったら問題になるに決まってんだろ。
「まあまあ、ここに一つのトランプがあります、これでババ抜きをしましょう。なあに、心配は要りませんよ、お兄ちゃんが負けたら私への愛情を行為で表現してくれるだけでいいんです」
「言い回しだけは聞こえがいいが、お前から劣情を感じるから嫌なんだよ……」
絶対ヤバイ命令をするに決まってる。死ぬようなことは頼まれないだろうが、どう考えても人に見られると社会的に終わるようなことを頼むだろう。
「お兄ちゃんが勝ったら私に自由に命令していいんですよ? この可愛い美少女に自由に命令出来るのを魅力に感じないんですか?」
自分で言うなよ……
「分かったよ……仕方ないから勝負をしてやる。ソレで満足するんだろう?」
俺は椅子の位置を移動させ、阿地の対面に座る。さて、しかけられたゲームをできる範囲で戦ってやろう。
「ククク……お兄ちゃん、かかりましたね! 私はお兄ちゃんの顔色を何回見たと思っています? 私にかかればお兄ちゃんとババ抜きで負ける気なんてしないですね」
自信満々なので少しムカついたこともあり、妹に兄の威厳を見せつけてやることにした。その自信を砕いてやろうじゃないか。
数試合後……
「ぐぬぬ……何故私が負け続けているんですか! しかもお兄ちゃんは私にロクな命令をしてこない!」
「おとなしく部屋に帰って勉強しろってのをロクな命令じゃないと言い張るお前はどんな命令をしたかったかが知れるな……」
阿地はもうすでに数試合負けている。俺の顔色をうかがうのは自信があるそうだが、一度ジョーカーを阿地が持つと俺は一切それを引いていない。
「なぜ……何故勝てない! お兄ちゃん、おかしいですよ!」
「これ以上やるなら命令に『俺に無茶を言わないこと』というのを言うが、それがお望みか?」
阿地はしばし考えた末に首を振った。流石に負けすぎて心が折れたようだ。
「次は勝ちますからね!」
そう捨て台詞を残して妹は部屋を出て行った。俺は出て行く妹の方を見ながら、『俺の顔色ばっかり集中するから気づかないんだよなあ……』と部屋の壁に掛けてある鏡に目をやった。




