149_妹とまほうかーど
今日、少し気になるものがゴミ箱に捨ててある。いや、中学生らしくないわけではないが、普段ならこんなにたくさん捨てられているのはおかしいモノだ。
流石に妹が心配でもゴミ箱を漁るのはどうかという考えと、事が大事にならないうちに収めるならこの件について話し合った方がいいという考えが浮かぶ。
急いては事をし損じるとも言う、一旦マグカップにインスタントコーヒーを入れ、自室に戻ると電気ケトルでお湯を沸かしてコーヒーを淹れた。ソレを飲みながら念のため写真に撮って置いた『ソレ』についてどうしたものかと考える。
ソレは所謂ところのプリペイドカード、要するにアプリ内課金等で使用するためのクレジットをチャージするための『魔法のカード』だ。
確かにアイツはゲームを熱心にしていることはあったはずだが、問題は枚数だ。コンビニで売っている金額の最大であろう一万円のカードが複数スクラッチ部分が削られた状態でゴミ箱に捨ててあった。
ということは数万円の買物をすると言うことだろう。いや、おかしな事では無いかもしれないが、それにしたって金額が大き過ぎはしないだろうか?
そんなことを考えていると、隣の部屋から声が聞こえる。始めは阿地の声かと思ったのだが、どうも違う少女の声に聞こえる。それをよく聞くと『アチお姉ちゃん! スパチャありがと!』と聞こえた。
悪いと思いつつ耳を澄ますと、配信者の名前が出てきた。PCを起動して動画サイトを出し、聞こえた名前をタイプすると、所謂Vのストリーマーが出てきた。ちょうど配信をしていたのでそこを開く……
ああ、チャット欄の上の方に見覚えのある名前が赤く輝いている……なんだよこれ……流石にこれは手を出しちゃ行けない領域だろう。
俺は全てを諦めた目でチャット欄に居座る妹のアカウントを見ながら、世の無常について考えていた。
そして頻繁にチャットと投げ銭を飛ばすそのアカウントは当然認知されていて……どうやら阿地は配信内では知られているアカウントらしい。
ただぼんやりと時々出てくる色つきのチャットを見ながら、なんとなく課金を制限したくなる親の気持ちが分かったのだった。
俺はそっと部屋を出て、キッチンに行くと、夏だということで冷しゃぶを用意した。夕食に来た妹は突然俺が豪勢な料理を作ったことに驚いて理由を聞いてくるので、『俺だってたまには金のかかる料理をするんだよ』と答えておいた。
それから、数日間、ゴミ箱にプリペイドカードが捨てられることはなくなり、週末に捨ててあったのも一枚だけだった。それから妹の料理は多少お金がかかったものになったのは見て取れた。
俺が視線を遣ると、『お兄ちゃんは私にとっての主食なんですから、私がおやつをつまんだくらいで妬かないでくださいよ』と面倒くさそうなものを見る目で言われた。お前が何を食べようが自由だが金のことは考えろと言いたいのを飲み込んでにこやかな笑みを返すことしか出来なかった。




