144_妹と身につけたスキル
今日は目覚まし時計で目が覚めた……と思った。ちょうど朝のキリのいい時間にでかい音が鳴ったので、ああ、目覚まし時計かと思い手を伸ばしたのだが、鳴っている様子が無い。
眠い目を擦って目覚ましを手繰ると設定すらされていない目覚まし時計があった。
じゃあこのやかましい音はなんだよ、そう思っていると隣の部屋から聞こえていることに気が付いた。
しばし考えてから、聞かなかったことにすることに決めた。どう考えてもこの音量で妹が音を鳴らしているのは何かあったときだ。せいぜいこの前の妹ゲーがついに全ルート攻略出来たとかそんな所だろう。俺は火中の栗を拾うほど優しい人間ではない。
そっと布団を被って寝てしまおうとした。どうせ休みなのだから寝ても何も問題は無い。わざわざ文句を言えば何に巻き込まれるかなんて分かったもんじゃない。君子危うきに近寄らずということだ。
再び布団に入ると微睡んできた、眠気が来たのに安心死手寝返りをうったときだ、何か柔らかいものがあった。
「お……お兄ちゃん、いきなり大胆すぎますよ」
その声で目が一気に覚めて、布団から出た。
「なあ阿地、なんで当たり前のように俺の部屋の布団に入っているんだ?」
そう俺の布団に入ってきていた阿地に尋ねると……
「妹ゲーをクリア出来たのでつい昂ぶってしまいまして」
「くだらない理由で俺を巻き込むんじゃない! しかも気配を消して忍び込むな! まったく入ってきたのに気づかなかったぞ!」
「妹ですから、お兄ちゃんに気づかれないよう部屋に入るスキルは当然ありますよ」
「なんだそのファンタジー世界でも真面目に外れスキル扱いされそうなスキルは……追放されてもマジで役に立たなくってどうにもならないスキルっぽいな……」
なんで現実にそんなスキルを身につけてるんですかねえ、何の役にもたたないだろうに、平気でそんなスキルを身につけている妹が怖いよ。
「私の優先順位だとお兄ちゃんが最優先ですから。お兄ちゃんの保護のためなら多少のことは犠牲にしてでも、お兄ちゃんと関係あることを極めるんですよ」
「極めなくていいから……そんなことを本気にならなくていいっての」
自己研鑽が悪いとは言わないが、もう少し有意義な方に力を割けなかったのかと思うと残念で仕方ない。コイツだってそれなりに頑張ったんだろうに、その結果身についたのがくだらない能力など悲しくなってしまう。
「まあまあ、お兄ちゃんだって素直に感動していいんですよ? 一途な妹が熱心に思ってくれるなんて嬉しいでしょう?」
「もう少し清楚だったら嬉しいが、ヤンデレは怖いんだよ……」
「失敬な、私はただ純粋なだけですよ」
純粋な気持ちというのは時に残酷な結果を引き起こすのだなあと、俺は諦めてキッチンで朝飯を作りに行った。それから少しして阿地が来たのだが、部屋からガサゴソ音がしていたのと、俺より後から来たことに関係は無いものだと信じたい。出来れば家捜しされていないといい仲なんて事を思った。




