137_妹と夜のお茶会
今日はもう夜と呼べる時間にコーヒーを一杯飲んでいた。カフェイン云々は詳しくないが、眠れるので問題無いだろう。
そもそも前から緑茶や烏龍茶を寝る前に飲んでいたので、今更コーヒーのカフェインくらい気にするようなことではない。そうして優雅な時間を過ごしていると、バタバタと足音が聞こえてきた。平穏な日常は終了のようだ。
「お兄ちゃん! 夜食ですか? 一緒に食べましょう!」
「食いしん坊かお前は……ただ単にコーヒー飲んでるだけだよ」
着た途端にやかましいヤツだなと苦笑する。悪くない日常だが、もう少し時間を考えて欲しいな。
「では、これを出しましょう!」
そう言って阿地は戸棚を開けて、中からウエハースの袋をとりだした。ご丁寧に隠してあったのか、気が付かなかったな。
「準備のいいことで……」
「お兄ちゃんと何かあったときのためにいろいろ準備していますよ! そう、お菓子だけじゃなく……」
「はいストップ、全年齢向けでない発言をしそうだからやめとけ。俺たちは善良な中学生なんだからな、そこはきちんと自覚しておけよ」
釘を刺しておく、現実的に持っているやつがいるものだったとしても、持っていると明言したらマズいものがあると言うことは理解しておかないとな。
そうしてインスタントコーヒーを阿地の分もマグカップに入れてお湯を注いだ。
「ほら、これ飲んで落ち着け。調子に乗って不穏なことを言わないように気をつけろよ?」
「お兄ちゃんは失礼ですね、品行方正を絵に描いたような私が不規則発言なんてするはずがないでしょう」
「品行方正なヤツはこんな時間に起きてきてコーヒーを飲んだりしないと思うが……」
自分は品行方正とは程遠い人間だからいいにしても、それを自称する阿地がすることではないと思う。まあそんなものは事象に過ぎないので好きにすればいいのではあるが。
二人でコーヒーを飲みながらウエハースを食べていった。バニラ味が実に美味しい、茶菓子としては十分だろう。
「いやあ、準備しておくものですねえ! お兄ちゃんの部屋の音を聞いていた甲斐がありま……おっと」
「今なんて言った? 品行方正を絵に描いた妹さん、どうやって俺が部屋から出たのを知ったのかな?」
「ふっ……妹たるもの聴診器の入手くらい余裕なのですよ」
壁に耳ありとは言うが、実際に壁から音を拾う妹って怖いな……まあ盗聴器じゃないだけマシか。怖い怖い、不穏なことはしないように気をつけないとな。
そうして夜は更けていった。なんだかんだと言っていたが、お茶も茶菓子も美味しい悪くない二人のお茶会だったと思う。俺もなんだかんだ甘いと思うが、妹が楽しそうにしているのを見るのは好きだった。
こうして今日も月が昇っていくのだった。




