124_妹を静かにしたい
「退屈です、RPGのレベル上げをしている方がよほどエキサイティングです」
「最近のRPGは難易度調整が出来るのもあるから、レベル上げの必要無いものもあるぞ?」
「言葉尻を捉えないでください!」
コイツが退屈しているのはいつものことだ、いちいち気にしてられるか。妹相手にご機嫌とりをしなきゃならないと言うのか? 兄の仕事は随分と多いんだなと無茶振りにうんざりする。
「退屈なら本でも買ってこい、ほれ、プリカだ」
本でも読んでいれば静かにするだろう。プリペイドカードの代金は少し痛いが、電子書籍でも読んで時間を潰してくれ。
「わっかりました! 濃密な兄×妹本を買ってきます! ここで読みますのでお兄ちゃんも興味があったら是非!」
「はいはい、分かったからおとなしく本を読んでような」
俺がそう言うと、早速プリカをスマホで読み込んでいた。多分これならしばらく静かにしてくれるだろう。
阿地はお行儀が悪いのを分かっているのかどうか、ソファに寝転がってスマホを弄っていた。ときおり、『うーん』とか『これは……』とか言っていた。俺にだる絡みをしてこないだけでもいいもんだ。
しばしそのまま静かにしていたかと思うと『ヨシ!』という声が聞こえたと思うと、俺に声をかけてきた。
「お兄ちゃん! 妹ゲー買ったので残高が足りません! カードおかわりお願いします!」
「本を買えって言ってたよなあ!?」
なんだよコイツ……あの金で妹ゲー買ったの? ワケが分かんねーよ、なんなんだよコイツ!
「まあ妹ゲーを買ったのでその攻略情報でも見ますかね……」
「じゃあもうそれでいいから静かにしてくれ」
そう言うと、阿地は本当に静かになってスマホと向き合っている。認めたくはないが、多分本を読んでいるときよりしずかだろうと思うくらいには集中していた。
これでいいとはいわないけれど、静かになったんだから悪くない。妹ゲーを隙あらば買っているところは大目に見るとしよう。
そうして緩やかな休日は過ぎていったのだが、翌日曜日、阿地は注文していたのであろう妹ゲーが届いたあとだ、俺が部屋で本を読んでいると隣の部屋から奇声が上がってきた。妹が妹ゲーをプレイしながら、奇声を上げているところは見たくないなあと思う。確かに昨日はしずかだったはずなのに、まるでそのとき溜めていた声をまとめて発散するように魂の叫びが響くのだった。
次からは他のものも買えるプリカじゃなく、図書カードにしようと決意を新たにした日になった。




