121_妹は兄とおそろいがいい
「お兄ちゃん、ゲーミングスマホが欲しいんですがオススメの機種ってあります?」
うん、質問としては意味が通っているが、我が妹は根本的な勘違いをしている。
「2Dアドベンチャーゲームでそんなスペックを要求するゲームは無いから適当に選んどけ」
身も蓋もないがこれが真理だ。ギャルゲーをプレイするのにハイエンドスマホを買う理由は無い。
「じゃあお兄ちゃんとおそろいのスマホにしましょうかねえ……」
「……別にそれは構わんが、もう型落ちになってるからサポートが薄いぞ」
残念ながら型落ちの機種に延々とサポートしてくれるメーカーは少数派だ。安い機種なんだから新しいの買え、と言いたいのだろうが、中学生にとっては結構な値段なんだよ……
「ぐぬぬ……ではお兄ちゃんが欲しい機種で……」
「希望を言えば十万じゃ全然足りないから参考にも何にも並んだろ。諦めて現実的な機種を買え」
そりゃあ欲しいものはあるさ、このハイエンドがインフレしている時代じゃ無ければどんなに欲しかったか、それは求めすぎなので仕方ないとは思うんだがな。
「えー……せめてお兄ちゃんとおそろいが欲しいじゃないですか! お兄ちゃんだって私とおそろいだったら嬉しいでしょう?」
「いや……ガジェットにそんな思い入れ無いし、良さげなのがあったら普通に買い替えるよ」
別にスマホなら通販で買えるしな、遠くにいる親から仕送りを貯めているので、スマホくらい買っても支障が無い。その上で今欲しい機種は無い。
「じゃあお兄ちゃんのお勧めを買いますから教えてください」
「何で俺にそんなこだわるんだよ……?」
「野暮なことを聞きますねえ、それを持っていればお兄ちゃんが興味を持って、触らせてくれって言うかもしれないじゃないですか」
そんなプライバシーの塊を除き怠惰なんて思わないんだがなあ……何を求めてんだか、まあ適当に気になってるのを教えておこうか。
「この辺がミッドレンジでバランスがいいヤツだぞ。安すぎるのはまともに動かないのがあるから辞めとけ」
基本的なことだけ教えて数機種オススメとしておいた。阿地なら無理なく支払える値段帯だし、流石に無茶はしないだろう。
「ありがとうございます! フフフ……お兄ちゃんのアドバイスはやはりいいですねえ」
何がどういいのか分からんが、本人が満足しているならそれでいいか。諦めて満足いくように使ってくれ。
その週の土曜日、宅配便が届いた。二つの箱を持ってきたのだが、どちらも阿地名義になっていたので玄関に置いておいたところ、少しして気が付いたのか喜んで俺の所へ来た。
「お兄ちゃんのオススメ、二つ買いました! これで一緒のスマホが使えますね!」
大喜びでそう言う阿地に何も言うことはできない、そこまで俺と一緒が良かったのか? 二つ買ったとしたら、ハイエンド近い機種が一つ買える値段くらいするだろうに……
「お兄ちゃん、それじゃ、一緒に設定しましょうか」
ニコニコ顔で言うものだから、無碍にも出来ず、二人で新しいスマホを設定して一日が終わったのだった。
なお、後日阿地が俺のスマホと自分のものをこっそりすり替えようとして、パスワードが分からず困り果てていたのはまた別の話だ。




